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ヘルスビジネスマガジン社会長・木村忠明の緊急連載レポート「新型コロナ感染予防における食成分の役割」①

【第1回】ウイルスの細胞侵入と増殖を防ぐ

血管内皮にもウイルスが

4月20日、医学誌『ランセット』に「COVID-19の内皮細胞感染と内皮炎」という論文が載った。これは新型コロナの治療に携わる医療関係者に衝撃を与えた。というのも、普通の季節性インフルエンザであれば、ウイルスは上気道から侵入して肺炎を起こすケースが多いが、新型コロナでは亡くなった人の血管内皮にウイルスがびっしり付着していたからだ。

今回流行している新たなウイルスの正式名称はSARS-CoV-2という。これに感染して発症した病気をCovid-19と呼ぶ。このウイルスは季節性インフルエンザとは違って風邪などと同じコロナウイルスの新種だという。このウイルスの表面にはスパイクというたんぱく質の突起が王冠のように突き出している。ヒトの細胞に侵入するときには、このスパイクを使う。人の細胞の表面にはアンジオテンシン変換酵素2(ACE2)という受容体があるが、これと結びついて、細胞内に侵入することが分かっている。

このACE2は肺や胃腸管、腎臓などの器官にあるとされ、なかでも肺の細胞に侵入して肺炎を起こすとみられていた。ところが血管内皮の細胞にもACE2があり、これにウイルスが侵入して全身性血管炎症を起こし、血管が破壊される。このため老化や糖尿病で動脈硬化が進んだ高齢者が重症化しやすいことが分かってきた。このため、重症化すると急性呼吸促迫症候群(ARDS)を起こすだけでなく、さらに血管炎、血栓症、脳梗塞、心筋障害を起こし、急性腎機能不全など多臓器不全を起こし死に至る。

 

死に至る3つの段階

ウイルスが人の細胞に侵入することを感染という。感染するとウイルスは自分のRNAを使って、感染した細胞のDNAで自分の複製を作る。自己増殖する細菌と違って、ウイルスはそうしないと増殖できないのである。そのため、多くの薬の開発は①ウイルスが細胞内に侵入するのを阻止して感染を防ぐ、②細胞内でウイルスの増殖を阻止する、などを目指して行われている。

さらにCovid-19に罹った場合、8割は無症状か軽症だといわれるが、高齢者や既往症を持った人は重症化しやすい。こうなると死亡の確立が高まる。重症化を抑えることは死亡率を下げることになるが、この病気の重症化の原因がサイトカインストームだと言われている。ウイルスが体内に侵入することにより、免疫系が異常を起こし、サイトカインが増え続ける。なかでも炎症性サイトカインが異常に放出されることだ。実際に新型コロナウイルスに感染した人からはインターロイキン(IL-)の1β、IL-6、IL-17の3種類の炎症性サイトカインが検出されている。

 

植物には抗菌、抗ウイルス作用が

これらのウイルスに対して、植物に含まれる化学成分が役立つ可能性があるという指摘がある。2016年にアリゾナ大学のケリー・ブライト博士は食品中のウイルスを殺す成分の研究を明らかににている。

これによると、ウイルスは細胞膜のように囲むエンベロープという膜を持ったものと、そうでないものの2種がある。植物に含まれるサポニン、チオスルフィネート、グルコシノレート、テルペノイド、ポリフェノールなどの成分は、このエンベロープを持ったウイルスに効果を発揮することが多くの研究で明らかになっているという。新型コロナウイルスもこのエンベロープを持ったウイルスだというのでかなり期待できそうだ。

どのように効くのかというと、ウイルスが細胞に侵入するのを防いで感染を阻止する。そのためにウイルスのエンベロープを溶解し、ウイルスが感染に使うスパイクのタンパク質と細胞側にある受容体(例えばACE2)タンパク質の分解活性などで細胞への感染を防ぐのだそうだ。

一方、感染を許したとしても、細胞内でのウイルス複製の初期段階(数時間以内)を阻害する。 例えばウイルスが複製されるための脱殻を阻害し、宿主細胞内でのウイルスのもとになるタンパク質合成やウイルスタンパク質の修飾を阻害する。ありがたいことに植物成分はこれらの作用を複合的に持つ成分もあることが分かっているという。

 

※本連載は小紙「ヘルスライフビジネス」に掲載された内容です。

第2回は8月12日(水)配信予定。

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