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【記者の目⑧】コロナ禍でドラッグストアが推売すべきはOTC

客数増と客単価減の拍車かかる

今日、新型コロナウイルスの影響でマスクや消毒液の需要が高まり、その販売方法ばかりが注目され、まるで「マスク屋さん」のように位置づけられてしまったドラッグストア。しかし、ドラッグストアが担うべき役割、その本質はそこではない。

OTC医薬品や調剤併設、サプリメントなどの専門性が高いヘルスケア商材を供給し、その周囲にビューティケア、ハウスキーピングを置き、そして昨今では食品拡充によって利便性をさらに高めているのがドラッグストアだ。

マスクや消毒液はヘルスケアの1カテゴリーでしかないが、“コロナ禍”といった異常事態であることから、一般紙各社がそこばかりを切り取って報じており、マスクを購入する場として多くの消費者から注目されたのだから無理はない。

大手ドラッグストア各社が発表する最新の月次動向に目を向けると、客数は大半が2桁増となっている。ドラッグストア数軒をはしごすれば一目瞭然だが、コロナによってセルフケア意識が高まり、普段ドラッグストアに利用しないような客層も取り込んでいることが分かる。

だが、客単価は軒並みマイナス。来店客数の増加が売上高をカバーしいるのがトレンドとなっている。これは今に始まったことではなく、「食品拡充による粗利率の低下」が大きな原因となっているが、そこに「マスク・消毒液の指名買い」という要素が加わり、客単価の低下に拍車がかかったと読み取れる。

 

「ドラッグストアの業績を見ると好調だが、うちの数字は厳しい…」

対コンシューマーのヘルスケア製品を取り扱う医薬品卸売業の経営幹部は頭を悩ませていた。この一言でマスク・消毒液以外のヘルスケア商材が苦戦していることを理解するのは容易い。大手各社の第3Q(2019年4~12月)の決算を見ると増収減益。インバウンド需要に陰りが見え始めてきたことが浮き彫りとなった数字だったが、コロナ禍の真っただ中である第4Q(20年1月~3月)の業績はさらに厳しいものになると予想できる。

先述の通り、現在ドラッグストアには普段利用しない層が来店している。だが、今のところ現場に目を向けると、ドラッグストアはこの層をターゲットにした販促には手つかずになっている。

これまで時事的かつ外的な要素を味方につけ、成長を維持してきたドラッグストアだが、今後はインバウンド需要もコロナ特需も消えるとなると、自力での市場開拓が成長を継続させる鍵となる。その1つがコロナ特需による新規顧客のリピーター・ロイヤルカスタマー化が重要になってくる。

確かに、キャパシティを超える客数への対応で店頭やスタッフは疲弊している。だが、それを意識した店づくりが出来ているか、否かで“流通業の勝ち組”であったドラッグストア業界の中にも同様の線引きがされるだろう。いかに勝ち組として生き残るか。そこで重要な役割を担う商材の1つは、他チャネルでは販売が難しいOTC医薬品の活用が挙げられる。

 

コロナが生み出したOTCニーズへの対応を推奨

「新型コロナウイルスの影響で『感染リスクが高い医療機関に行きたくない』という考えから、当社のOTC医薬品が好調に推移しています」

和漢薬を販売する製薬企業の経営トップが明かす。売り上げ状況(4月1日~16日のPOSデータ、対前年比)を聞くと、膀胱炎治療薬・12包114%、22包176%、糖尿病治療薬・128%、高血圧治療薬・158%と、いわゆる慢性的な疾患に対するOTC医薬品が非常に伸長していることが分かる。膀胱炎の薬の大容量パッケージの伸びが特に顕著なのは、繰り返し罹患する人が買い置きしていることが予想できる。

同社に膀胱炎の薬を使う消費者から「膀胱炎になった際、いつもは病院へ行きますが、今は新型コロナウイルスの感染が怖くて。薬局で相談して初めて膀胱炎治療薬のOTC医薬品を買いました」と実際に電話がかかってきたという。

同社製品ではこの他、肩こりや背中痛の治療薬が120%、肌荒れ治療薬が147%と好調。これらは在宅ワークによる血行不良、生活習慣の乱れやマスク着用による肌荒れによるものと考えられる。

新型コロナウイルスは、感染リスクへの懸念や在宅ワーク、マスク着用など生活スタイルを一変させ、さらにこれまでにはなかったニーズを顕在化させていると言っても過言ではなく、ここで紹介した膀胱炎治療薬や肌荒れ治療薬に関してはもちろんのこと、他のOTC医薬品の動向にも注視し、売り場に反映させ、得たユーザーをリピーターとしていくことが、コロナ後の業績にも大きく影響してくる。その主力となる商材が、他チャネルでは販売が難しいOTC医薬品ならば、差別化としても確実に生きてくる。

かつてはドラッグストアの主力カテゴリーとして市場を拡大してきたOTC医薬品だが、食品拡充や調剤バブルなどへの対応で手いっぱいになってしまい、近年はインバウンド需要で若干の伸びを示したが低迷してしまい不遇だったと言わざるを得ない。しかしここにきて、新たなニーズに対応する旗手として、OTC医薬品が求められている。

まさに今、“ドラッグストアの本質”に回帰すべき時分と位置付けられる。

 

「月刊H&Bリテイル」編集部・佐藤健太

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