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第5回 ゲスト:松井東地域包括支援センター・センター長・竹内もみさん

クローズアップ在宅医療・介護 小原道子さんがキーパーソンと語る⑤

地域包括ケアにおける介護支援専門員の重要性

今回で5回目を迎えた小原道子さん(日本ヘルスケア協会・理事、岐阜薬科大学・特任教授)の対談企画は、埼玉県所沢市の松井東地域包括支援センターでセンター長を勤める竹内もみさんをゲストに迎えた。竹内さんは介護福祉士、社会福祉士と主任介護支援専門員の資格を持ち、8年間にわたって同地区の高齢者福祉に力を注いできた。そんな竹内さんに介護・福祉の道を歩んだきっかけ、コロナ禍における地域包括支援センターの動き、地域包括ケアにおける重要なファクターなどを聞いた。(記事・写真=佐藤健太)

小原道子さん(左)と竹内もみさん

 

小原さん 竹内さんが介護・福祉に関心を持ったきっかけは何でしょうか。

竹内さん 私の祖父は医師でした。私が小学生高学年から中学生くらいの頃に岩手県田野畑村というところで国保の診療所で仕事をしていました。無医村にならぬよう、医師を探していた田野畑村のその地域医療に貢献したいという気持ちで、晩年になり自身が運営してきた診療所を畳んで田野畑村に行ったと聞いています。

そんな祖父から、たくさんの三陸わかめと手紙が届きましたが、その中に「これからは地域医療が大事だよ」「保健師さんと地域を回っている」という内容がありました。ですので幼い頃から、こうした考え方と触れてきたということも、私が医療や介護、福祉の仕事に興味を持ったきっかけの1つだと思います。

また、私が中学生だった1981年は国際障害者年でした。「典子は、今」というドキュメンタリー映画があり、それを見たことも大きかったと思います。両腕がない状態で生まれてきた彼女はリハビリのために安定した三輪車と、自分でこがなければ倒れてしまう自転車を提案されましたが、あえて大変な自転車を選び、チャレンジしていく姿を見て、とても凄い人だと思いました。こうしたことを中学生の多感な時期に知ったことが、介護や福祉に目を向かせた要素になっているのかもしれません。

高校に入学し、「福祉の仕事がしたい」という夢を語ると、周りにはそうした人がいなかったので驚かれることもあったようです。福祉コースがある大学に進むことに決めました。

ある日、高齢者福祉の授業で「これからは高齢者が増える」と教わり、未来の日本では確実に必要とされる仕事であると認識しました。

また、高齢者福祉の教科書に「高齢者には冗談が通じません」のようなことが書いてありましたが、「様々な経験をして、楽しいことも悲しいことも多くを知ってる人たちに冗談が通じないわけがない。私が現場に行って絶対に面白いことだと証明してやろう!」と少し反骨心的なものがあったのかもしれません(笑い)。

卒業後は特別養護老人ホームに勤めました。当時は福祉系の大学を出て、介護の現場を知り、相談員になるというのが主流の時代でした。介護保険が始まる14年前の頃です。

小原さん 先を見据えた選択でしたね。「これからは地域医療が大事」と仰ってくださったご提案は、まさに今の社会や私たちに活かされている先見性のあるご見識と思います。一方で医療支援の専門家として早い段階で地域医療の大切さに気付かれたという事は、それだけ地域に密着したお仕事をされていたのだと思います。

私自身も薬剤師という選択肢の中で家庭環境はとても大きかったと感じています。両親が薬剤師だったこともありますが、祖父が仕事で障碍者施設に行くときなどには時々私を連れて行くこともありました。自分とは異なる機能で明らかに困難な環境の中、今を精一杯生きる一方、彼らが笑顔と感謝の気持ちを持って生き抜いていることに衝撃を受けました。五体満足な自分が毎日を当たり前のように過ごしているという事に愕然としました。そしてそのような経験を通じて自分は社会で何が出来るのだろうと真剣に考えだすことになり、漠然とですが人の役に立ちたいと思うようになったのだと思います。また母が地域の薬局に努めていて、普段はエプロン姿の母が白衣を着て接客している姿には子供ながらに憧れていました。なりたい職業はいくつかあったのですが、最終的には専門性を持った資格で、地域に密着できる薬剤師を選びましたね。

最初にお取りになった資格はどの資格ですか。

竹内さん 最初は介護福祉士、それから介護支援専門員、社会福祉士、主任介護支援専門員という順序で資格を取得していきました。

小原さん 介護支援専門員という資格にどういった印象を持っていましたか

竹内さん 介護支援専門員(ケアマネジャー)は日本固有の資格ではありますが、ケアマネージメントという理論はイギリスでもアメリカにも存在し、それをナースやソーシャルワーカーが担っています。日本に介護保険制度が導入され、介護支援専門員が資格として確立したことは、高齢者福祉における“コーディネート役”がハッキリしたということです。

介護保険以前にもデイサービスやショートステイなどのサービスがあり、そこに多くの職種がかかわっていましたが、サービス事業者とそして利用者の調整し、物事をスムーズに進めていく役割がなかったわけです。

かつてデイサービスの相談員をしていた時期がありましたが、今のように介護サービスが充実していた訳ではありませんでしたし、振り返ってみると宛行扶持だったように思います。しかし介護の現場で「誰が関係者を招集するのか?どうやって方針を決定していくのか?」という場面では意見が分かれ、調整しきれないこともありました。その際に「これを調整する役割があれば…」と考えることがありました。

多様な介護サービスを利用者さんに迅速に提供するという意味合いで介護支援専門員の誕生は良い影響があったと思います。介護を必要とするその方に合った介護サービスの調整役を担うのが介護支援専門員だとはっきりしたのは利用者さんの視点でもいちばん良かったことだと思います。

小原さん 介護保険が始まり20年が経過しましたが介護支援専門員の役割は明確化されたと感じています。それは介護支援専門員が一人一人の事例に真剣に寄り添い、医療、介護、福祉を横断的に繋げてきたことが利用者からはっきりと見えたからでしょう。そのような点から言うと、薬剤師はかかりつけ薬剤師の機能が明確化され数年が経過しましたが、制度が先行し、仕組みに追いついていくにはもう少し時間がかかると思っています。

実際、かかりつけ薬剤師の機能は、地域包括と連携することで身近な医療情報が生活支援と融合し、適切な医療支援に繋がるとともにより良い暮らしのご提案に繋がるのではないかと思います。

先日も地域包括支援センターウエルシアハウスから相談がありました。利用者の訴えでトイレが近くて立つとふらふらするというのですが、薬を見ると明らかに副作用と思えるような薬が沢山出ていました。高齢者で薬を服用していない方は殆どいません。

いつも話しますが「クスリ」は反対から読むと「リスク」であり、主作用ばかりではなく副作用が強く出ることもあります。薬の副作用で食事が摂れなくなる、或いは薬の副作用による脱水でふらふらするなどの生活変化は、介護支援専門員さんを含めた地域包括支援センターとのコミュニケーションにより少しずつ改善できると考えています。

コロナ禍、松井東地域包括支援センターにどのような変化がありましたか。

医療、介護、福祉を横断的に繋げる役割

竹内さん 高齢者にかかわる仕事ですから、感染リスクを下げるために三密は避けなければならず、緊急事態宣言中は、職員の交代勤務も取り入れました。また、センター内にある「地域交流スペース」は一時止めざるを得ませんでした。この「地域交流スペース」には元気な高齢者がたくさんいらっしゃいますが、その方々は「あの人が困っていましたよ」と教えてくれる人たちでもあり、地域包括の役割をつないでくれる人たちでもあります。そうした部分が止まってしてしまうと地域のお年寄りたちの姿が見えない、情報が入ってこないということになります。 地域の高齢者の方々が「要介護になってしまうかもしれない」「オレオレ詐欺にあってしまうかもしれない…」と心配もしましたし、例年は冬場に多い孤独死なのですが、この夏にも発生しています。これは大きな問題だと思っています。

小原さん ウエルシアでもコロナ禍はお客様に衛生用品やマスクなどのご提供を思うように行うことが出来ず、大変ご迷惑をおかけしたと思っております。しかしながら地域の店舗で働く従業員はコロナ感染対策と戦いながら日々お店を開け、地域の方々に商品や情報を提供し続け現在に至っています。今は当時と比べると店舗も落ち着きましたが、改めてWITHコロナと暮らす「新しい生活」に向けた店舗の在り方を検討、実践していくことが早急に求められると思います。

竹内さん 所沢市内の病院でも新型コロナウイルスの感染者が発生し「処方箋が必要な人は電話診療でもいいですよ」との情報はありましたけれども、病院は多忙を極めていたため、何日も電話がつながらない状態でした。職員たちは、担当の利用者さんに薬の残りがあるのか、一斉に電話で確認をすすめる一方で、いつもの処方箋の内容をスポットとして受診し、出してくれるクリニックがないか探しました。日ごろから連携しているクリニックがOKしてくださり、利用者へご案内して、無事に薬を入手することができたので、良かったと思います。

小原さん 本当に仕事が多岐にわたってきますね。

竹内さん 地域包括は、地域のための仕事ですから、業務範囲がどこまでかとも割り切れない部分もあります。ですが裏を返すとそれは地域にとって必要な仕事であると言えます。松井東地域包括支援センターを担当するようになってから8年になりますが、地域にとってとても重要な仕事だと日々感じています。

小原さん 以前竹内さんと仕事をご一緒させていただいた際、民生委員さんたちとも積極的に情報共有していたことが印象に残っています。

竹内さん 所沢の場合、以前から地域住民の方々との地域ケア会議をどの地域包括支援センターでも実施しています。所沢市の民生委員はとても頑張っていると思います。「高齢者の全数調査(全戸訪問)」という取り組みがあり、全民生委員さんが、70歳以上の方々のお宅を毎年一斉に全てを訪問すると言う取り組みです。おそらく全国的に見ても珍しく、私はこれを“所沢の良心”だと思っています。

例えば、初めて地域包括支援センターに相談が上がってきたため情報が少ない方の場合でも、民生委員さんに「〇〇地区に住んでいる〇〇さんはどういう方ですか?」と聞くと、教えてくれますし、細かな情報もありとても頼りになります。

ある日曜日に新聞配達員の方が「ここのお宅に住んでいる高齢者がずっと留守のようです、どうしましょう」と連絡をくれました。“孤独死”が頭に過ぎりましたが、民生委員さんに電話をすると「先週から入院していますよ」と教えてくれました。この情報がなければ、警察・消防を呼んで、玄関のドアを突破していたかもしれません。やはり“地域包括ケア”という考え方は、医療や介護だけではなく、日々の情報収集が重要であり、職種を問わずに連携し、情報を共有していくことで、より良いものが出来あがってくると思います。

小原さん ありがとうございました。

地域包括支援センターは、「地域住民の心身の健康の保持及び生活の安定のために必要な援助を行うことにより、その保健医療の向上及び福祉の増進を包括的に支援することを目的とする施設」(介護保険法第115 条の 45)です。いわゆる、高齢者が住み慣れた地域で安心して過ごすことができるよう、包括的及び継続的な支援を行う地域包括ケアを実現するための中心的役割を果たすことが地域包括支援センターに求められているという事です。

具体的にお示しすると、地域包括は地域のリアルな情報が集約されている場所であり、体調不良からごみ屋敷問題、引きこもり、認知症など、お困りごとやご相談事を数多く抱えているという事なのです。非常に生活に密着しつつ専門性を伴う問題が地域に山積しているという事が判ります。

現在、地域包括支援センターは主任介護支援専門員、保健師(看護師)、社会福祉士という3職種が必須ですが、この職種の方々には薬の専門家や食生活のアドバイザーはいません。今まではこの3職種の方でコーディネートを行っていましたが、高齢者の殆どは薬を服用しています。また食事は年齢を重ねるに従い、確実に摂取量は減り、食形態の変更が必要な場合もあります。食べられなくなることは、確実に介護度を上げ、重症化に繋がります。

このような観点から行くと、薬剤師、管理栄養士にこそ地域包括ケアに積極的に参画いただき、地域を支える基盤の一員として活躍してほしいと思います。ウエルシアでは地域包括支援センターを受託、運営していますが、今後民間企業の方には、是非自社の地域包括支援センターを運営頂く事で、地域を知り、地域の声を聞き、地域を支えるという事を一番お客様に身近なところで行うという選択肢も視野に入れて頂けましたら幸いです。

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