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第10回ゲスト:合同会社リハビリコンパス 代表社員 袴田徹さん(理学療法士)

連載 クローズアップ在宅医療・介護⑩

ゲスト:合同会社 リハビリコンパス 代表社員 袴田  徹さん

定期巡回に Alexa導入して自立した在宅生活

 

――在宅生活の限界点をあげる。この言葉は、埼玉県春日部市・杉戸町で居宅介護支援事業所や24時間訪問看護、訪問リハビリ、訪問介護、デイサービス、定期巡回・随時対応型訪問介護看護など手広く在宅介護のニーズに対応する合同会社 リハビリコンパスだ。今回で第10回を迎える小原道子さん(写真右、日本ヘルスケア協会・理事、岐阜薬科大学・特任教授)の連載対談「クローズアップ在宅医療・介護」だが、そのゲストに同社・代表社員で理学療法士である袴田徹さん(写真左)をお迎えした。同社が運営する、定期巡回・随時対応型訪問介護看護「リハビリこんぱす」(杉戸町)では、スマートホームに対応したデバイス「Amazon echo」とAIアシスタント「Amazon Alexa」を導入し、利用者に“自分らしい生活”を提供するなど先進的な取り組みを行っている。袴田さんにICT活用のメリットと、介護の未来をどのように見据えているのかを聞いた。(記事・写真=佐藤健太)

 

小原さん 定期巡回のご利用者さまの自宅にICTを導入していると聞いて、とても先進的で面白い取り組みだと思いました。

 

袴田さん ありがとうございます。当社は「Amazon Alexa」などのICTを積極的に介護に取り入れようとしています。ですがICTに対しての理解度が低いせいか、抵抗感を示す方はまだまだ多くいます。介護とICTの親和性は高いと思いますし、私自身もとても有効だと認識しています。まずは、必要な方々にお届けできたらと考えています。

 

小原さん どのあたりで抵抗感をお持ちなのでしょうか。

 

袴田さん 介護を必要としている方のほとんどがご高齢の方ですので、これまで人手を必要としてきた部分を、機械で解決すること事態に拒否反応がありますが、それには明確な理由は無いように思います。ですので、少しずつ理解を深めていただくように取り組んでいく必要がありますね。

また、導入の支障になっているのが「Wi-Fi環境が自宅にない」ということです。NTTですと工事をしなければならない場合があるため「そこまでしなくても…」とお思いになることもあります。コンセントにプラグをさすだけでWi-Fi環境を整えるSoftBank Airというサービスがあるのですが、毎月コストがかかってしまいます。

ですが60代以上の方々でもスマートフォンやスマートホームなど、ICTを積極的に活用している方々も多くおられます。将来的に見ると、スマートホームで介護機器を動かすことが当たり前になる未来も考えられますし、今はビジネスとして難しい部分があるのですが、近い将来には受け入れられやすい環境になると予想しており、とても可能性がある分野だと位置付けています。

 

小原さん 在宅医療とICTの可能性を考えたとき、真っ先に思うのが、患者さんがたとえサポートが不足している生活を余儀なくされても、大きな支援となり得る可能性です。昔は、自宅に体調が悪い人がいると、家族や子供たちが互いに気づき、さりげなくフォローして暮らすという習慣はあったように思います。

私の祖母も身体が弱く、一緒に生活をしていた時期がありましたが、幼いながらに役割がありました。小さなことかもしれませんが、電気をつけたり、朝に声がけをしたりした記憶があります。このようなサポートは、すでにICTで若い方の生活に溶け込みつつあることを思うと、非常に在宅介護との親和性が高いと思います。

実際にICTを導入した利用者さまのお話をお聞かせください。

 

ICTの活用は在宅生活の限界点をあげる

袴田さん Amazon  Alexaを導入したのは、脊髄損傷で四肢が麻痺している要介護4の方でした。退院後に在宅に移行したのですが、Amazon  Alexaを導入して以降「Alexa、ベッドリモコンつけて」と声を出すことで、介護用ベッドをコントロールできるようになったことを非常に喜んでくださいました。

導入前は自分以外の誰かに介護用ベッドを操作してもらっていたのですが、「Alexaを使ってみて、誰にも頼らずに1人で出来ることが増えたのでとても楽です。本当に私には良かったと思います」と話してくださいました。

この方だけではなく、介護される方の多くは「あまり誰かに頼りたくない」「出来るだけ自立したい」「家族にも迷惑をかけたくない」と思っています。ICTを活用してでもこうした声に応えていくことが、自立した在宅生活につながりますし、当社の理念である「在宅生活の限界点をあげる」の実現にもなります。

 

小原さん 利用者さまの在宅生活が楽しく前向きになるためのツールの1つですね。以前、在宅患者さんを訪問していた時のことです。身体の大きなおじいさんを身体の小さなおばあさんが介護していました。おばあさんはおじいさんの身体を十分に持ち上げることが出来ず、寝たきりのおじいさんは大きな褥瘡を患いました。栄養不良等もありましたが、とても痛がっていた姿を思い出します。こんな時に「Alexaベッドをあげて」という事が出来たら、この老々介護が、少し前向きな介護になったのではないかと思いました。或いは重症化しなくても済んだのではないかと思います。こう考えた時、Alexaは生活視点だけでなく、疾患を重度化しないための取組としても非常に有効だと思います。

袴田さん 入院日数が短縮されていく中で、中・重度の介護が必要な方、医療依存度が高い方々の行き場がなくなりつつあるので、そこを当社が何とか支えなければいけないと思っています。

当社の経営理念が「在宅生活の限界点をあげる」としているのは、やはり「お家が一番自分らしくいれる最高の居場所」だと位置付けているからです。病院や施設では、ルールやペースに合わせなければなりませんし、そうなると病院や施設にいること自体がストレスになってしまいます。ですので、出来る限りお家にいていただける環境を作り、自分らしい生活をしてもらいたいと考えています。

介護には多くの課題があります。人材を募集してもなかなか集まらない「人材不足」、身内の介護のために仕事を辞める「介護離職」、子供たちが介護の担い手になってしまい教育が受けられない「ヤングケアラー」などの問題が山積しています。特に「介護離職」に関しては、この10年で2倍にも増えている状況です。そう考えると、出来るだけ家族の手を借りずに在宅生活できる環境が求められますし、ICTの活用はこれらを解決するための一助となります。

また、医療・介護費が逼迫する状況ですので、公的保険だけでは賄えない時代になっています。コロナの影響で、人との繋がりがなくなっているという課題もあります。そうした社会課題に挑むことが当社の姿勢ですので、Amazon  Alexaを活用したのも、その一環と言えるでしょう。

 

小原さん 先程、まだまだ在宅医療にICTへの理解不足という事が挙げられましたが、実際にICTの活用をしてみると、不安も少し軽減されるのではないかと思います。最近のドラッグストアは地域住民の居場所作りや、気軽に相談できる環境を整えつつあります。店頭で「Alexa を使って生活を体感してみよう!」のようなイベントを行う、或いは定期巡回などの仕組みを知って頂き、在宅介護が必要になっても安心して暮らすことが出来るというような情報を、リハビリコンパスさんのような企業と啓発していくことも、とても重要です。在宅介護へ向かう前の準備として、地域の皆様の健康を支えるドラッグストアと、このようなコラボレーションをすることは相性が良いと思います。

ICTを導入しているのは定期巡回ですが、その理由はあるのでしょうか。

 

袴田さん 定額報酬である定期巡回だからこそ、ICTを活用が可能なのです。当社も訪問看護や訪問介護をしておりますが、報酬は「1回あたりいくら」「行ったらいくら」というような形になっています。つまり、利用者さまには自立をしてもらいたいのだけど、自立してしまったら成り立たなくなるという報酬の仕組みです。

その一方で定期巡回は利用者さまのもとに行っても行かなくても報酬は定額ですので、「利用者さまがご自身で出来ることを増やし、可能な限り自立してもらおう」というポジティブな視点に立ってサポートできます。また、介護職員一人でできるだけ多くの人たちを支えられますので、非常に効率的でもあるといえます。さらに、利用者さまに何らかの緊急事態があったら家族の代わりに駆けつけることも出来ますので、定期巡回は効率的でありながらより深いサービスであるといえます。

 

小原さん 袴田さんご自身は理学療法士からのスタートです。しかし現在は、患者さんの身体機能のリハビリだけでなく、疾患と共に生きる患者さんの暮らしを支えるためのリハビリを多角的に行う視点に、とても感銘を受けました。このような若い方が、新たな挑戦を行っていく姿は、介護の未来に大きな希望になると思います。ありがとうございました。

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