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発表日:2020年7月18日
甘味・うま味・苦味物質の認識に必要なATPチャネルの構造可視化に成功
1.発表者:
出村 奏恵(東京大学大学院理学系研究科生物科学専攻 博士課程1年)
草木迫 司(東京大学大学院理学系研究科生物科学専攻 助教)
志甫谷 渉(東京大学大学院理学系研究科生物科学専攻 特任助教)
平泉 将浩(東京大学大学院理学系研究科生物科学専攻 博士課程2年/
田辺三菱製薬株式会社創薬本部創薬基盤研究所 研究員)
樽野 陽幸(京都府立医科大学大学院医学研究科細胞生理学 教授)
濡木 理(東京大学大学院理学系研究科生物科学専攻 教授)
2.発表のポイント:
◆甘味・うま味・苦味物質の認識に必須のチャネルであるCALHM1と、そのファミリーの立体構造を解明しました。
◆CALHM1のATP透過機構およびCALHMファミリーの多量体化メカニズムを初めて明らかにしました。
◆今後、アルツハイマー病などのCALHMファミリーに関連した疾患や、味の感受に関わる研究が進展していくことが期待されます
3.発表概要:
味の認識は、人間にとって重要な機能です。Calcium homeostasis modulator 1(CALHM1)は、ヒトを含む多くの哺乳類で、甘味・うま味・苦味物質の認識に必要なチャネル(注1)です。舌にある味蕾細胞の細胞膜に発現し、活動電位に依存してATP(注2)を放出することにより、味覚情報を味覚神経に伝達します。
しかし、そのCALHM1がどのようにATPを透過するのか、また、CALHM1のホモログが同様の構造をとっているのかなど、明らかにされていないことが多くありました。
今回、東京大学大学院理学系研究科の濡木教授らのグループは、京都府立医科大学の樽野教授らのグループとの共同研究のもと、CALHM1及びそのファミリーの立体構造を、クライオ電子顕微鏡(注3)を用いた単粒子解析法(注4)によって決定しました。決定した立体構造から、CALHM1のATP透過機構およびCALHMファミリーの多量体化(注5)の構造基盤が明らかとなりました。この研究により、今後CALHMファミリーに関連した疾患の研究が進展していくことが期待されます。
本研究成果は日本時間2020年7月18日に米国科学雑誌Science Advancesのオンライン版に公開されます。
添付リリース