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ヘルスケア最前線 ヘルスケアの可能性を広げる感染症予報サービス①

〜日立グループのヘルスケア領域に向けた新たな挑戦〜

4週間後までの流行リスクを予測する「感染症予報サービス」

「自身の子供たちがインフルエンザなどの感染症にかかって欲しくない。私と同じ親世代はきっと同じことを思っているはずです。この思いが『感染症予報サービス』を開発する第一歩となりました」。そう語るのは「感染症予報サービス」の生みの親であり、3児の父でもある丹藤匠氏(日立製作所 研究開発グループ 計測・エレクトロニクスイノベーションセンタ ナノプロセス研究部 主任研究員 工学博士)だ。丹藤氏は、新事業を考えるための「ソーシャルイノベーションリーダー研修」にて「感染症予報サービス」の原型を考案し、その後ブラッシュアップを重ね、2017年、日立グループ内のビジネスアイデアコンテストに応募。そこで2位相当となるシルバーチケット賞に選出される。その後「感染症予報サービス」は、さいたま市で「インフルエンザ予報サービス」としての実証実験を経て、現在は日立グループ傘下の日立社会情報サービスでビジネス化に向けた協議がなされており、ローンチは目前に迫っているという。高齢社会の到来で財政が逼迫する中、医療制度や皆保険制度を維持させていくには、ヘルスケア=予防が重要な役割となるのは明白であり、その手段として、感染リスクを事前に回避することが可能な「感染症予報サービス」は非常に有望であると考えられる。今回から「月刊H&Bリテイル」はこの「感染症予報サービス」を3号にわたり追いかけるとともに、ヘルスケアの重要性に迫っていく。(記事=佐藤健太)

 

なぜ感染症を予報できるのか?

その技術にフォーカス

「感染症予報サービス」は地域別の感染症の流行を4週間先まで予報を立てて、その予報を提供するものだ。日本医師会ORCA(Online Receipt Computer Advantage)管理機構による、「ORCAサーベイランス」(国内4,000以上の協力医療機関のインフルエンザを含む感染症の罹患患者数データを市区町村別に落とし込んだデータ)を中心とした関連データと、日立グループが開発した流行予測AIを活用し、地域ごとの感染症の流行動向を予測するサービスである。

丹藤氏は「一般の方々に、罹患者数を伝えても、それが多いのか少ないのか分析しにくいため、“流行レベル”をつくることで、より分かりやすい環境を整えました」と話す。

流行レベルは「レベル0」「レベル1」「レベル2」「レベル3」の4段回に分けられており、

最も感染リスクが高い「レベル3」は、例年の流行ピーク期と同等以上の罹患者が出た場合、「レベル2」は、罹患者数が「レベル3」の50%以上の場合、「レベル1」は罹患者数が50%よりも少ない場合、「レベル0」は、全くその地域で患者が発生していない場合という定義となっている。利用者視点の非常に分かりやすいサービスと言えよう。

 

一人の研究員の発想から生まれた

「感染症予報サービス」

「子供が感染症にかからないサービスにチャレンジしたい」。丹藤氏のこの思いが「感染症予報サービス」を現実のものにした。周囲の子育て世代に話を聞くと、「『この数ヶ月は感染症のシーズン』ではなく『この地域はこのタイミングで流行しそうだ』ということを知ることができれば、集中的な予防ができる」というニーズが明らかになった。

2017年、丹藤氏は日立グループ内の新事業のビジネスプランコンテスト「Make a Difference!」に「感染症予報サービス」の原型を応募した。その結果、国内外からの約500件にも及ぶ応募の中から2位相当となる「シルバーチケット賞」を受賞。2018年10月から本格的にビジネス化の検討が開始されることになる。

試作システムを組み立て、2019年12月にさいたま市にてインフルエンザの流行状況を予測・情報配信する「さいたま市 インフルエンザ予報サービス」の実証実験を開始。WEBサイトで予報を閲覧可能とし、またスマートフォンアプリ・LINEに専用アカウントを開設して登録者に定期的に予報情報が届くようにした。LINEでは登録者数が6,000人を超え、一般生活者の関心の高さがうかがえただけでなく、利用した住民からの評価は非常に高く、7割以上が「また利用したい」とアンケートに答えたという。

丹藤氏は「2019年度は患者さんの流行の出方が特異的なシーズンでした。例年の場合、1月中が最もインフルエンザが流行する傾向にあるのですが、2019年度は12月中がピークで、1月に入るとピークを越えました。こうした珍しいケースだったにもかかわらず、私たちの『インフルエンザ予報サービス』は、12月時点で1月には罹患者数が減少することを見事に的中させたのです。周囲の方々から『1月に流行しないことはない』と言われたこともあり、正直なところ不安な気持ちもありましたが、最終的には予報結果に対して多くの関係者から高い評価をいただけたので安心しました」と語る。

2020年4月、日立グループで「感染症予報サービス」をビジネス化していくことが正式に決まり、現在は日立社会情報サービスで10月末あたりに予定されているローンチに向けての取り組みが進められている。

 

“ヘルスケアのカスタマー窓口”

ドラッグストアとの親和性が高い

新型コロナウイルスの影響でドラッグストア業界には激震が走った。インバウンド需要が吹き飛びながらも、コロナ需要により業界全体では前年を上回る規模に成長している。これまでドラッグストアは繁華街立地ならば若年女性層、住宅街立地やロードサイド立地ならば主婦層など、明らかに“女性の買い場”だった。しかしコロナ禍を通じて、マスクや消毒剤を購入しに普段あまり来店しない男性などを取り込むことに成功しており、確実に消費者からの支持を拡大している。

当初はマスクや消毒剤にとどまっていた消費動向が、サプリメントなど周辺のヘルスケア商材までに広がっている傾向にあり、以前よりも“ヘルスケアのカスタマー窓口”的な役割が期待される業態に進化しつつある。日本チェーンドラッグストア協会が、数年前より掲げている“街の健康ハブステーション”としての意味合いが色濃くなっている様相だ。

こうした潮流にあるドラッグストア業界だが、まだまだヘルスケア=予防に対してのアプローチが不足している。一般用医薬品やサプリメントは「今の状態(症状)をいかに改善するか?」という切り口に対応するカテゴリーであり、「そうならないために、どうすればいいか」という提案ができずにいる。

現状のドラッグストアの不足部分を補うのが、この「感染症予報サービス」だと言える。「今季はこの時期に『レベル3』が予測される」という情報を店頭から発信することで、地域住民のヘルスケアに加え、その先にあるビジネスにもつなげることができるからだ。

感染症の予防には、マスクや消毒剤が有効とされているが、風邪予防ならば体を冷やさないような食品や寝具、あるいは感染しにくい環境をつくる加湿器など幅広いカテゴリーの商品に紐づく。「感染症予報サービス」を取り入れることで、地域住民に対し、予防するタイミングなど気づきを与えることができ、これとPOSデータなどのマーケティングを融合させればドラッグストアにも良い影響をもたらす。

また、超高齢社会の到来により医療費や薬剤費が高騰しており、皆保険制度の維持が危ぶまれている中、健康寿命を延伸させ、平均寿命との乖離を短くすべくヘルスケアの推進が急がれている。感染症は誰にでも罹患するリスクがあるが、特に高齢者においては症状の重篤化や長期化が懸念される。「感染症予報サービス」の活用は、高齢者の感染リスクを下げ、ひいては、社会保障費の抑制にもつながるという意味合いでも社会的意義は大きい。

まさに日立グループが掲げる社会イノベーション事業そのものだ。

 

日立社会情報サービスによる「感染症予報サービス」の紹介ページ

https://www.hitachi-sis.co.jp/sicknews/

 

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