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第9回ゲスト:医療法人社団研医会 高岡駅南クリニック 院長 医学博士 塚田邦夫さん

連載 クローズアップ在宅医療・介護⑨

第9回ゲスト:医療法人社団研医会 高岡駅南クリニック 院長 医学博士 塚田邦夫さん

管理栄養士は「いかに口から食べさせるかの専門家」

富山県高岡市に管理栄養士を在宅医療に参画させ、多数の素晴らしい事例を持つクリニックがある。医療法人社団研医会 高岡駅南クリニックだ。同クリニックを1997年に開業し、院長を務めている医師・塚田邦夫さん(医学博士)は、これまで約20年もの間、管理栄養士を含めたチーム医療で在宅医療に取り組み、医療の質を高めることに注力してきた。現在は在宅における管理栄養士の役割が多くの場で語られているが、塚田さんはその先駆者であると言える。自身のクリニックだけではなく、日本褥瘡学会・在宅ケア推進協会の理事長としても精力的に活動しており、多くの医療関係者や専門家から厚い信頼を寄せられている。「クローズアップ在宅医療・介護」のホストである薬剤師・小原道子さん(日本ヘルスケア協会・理事)もその一人である。今回で第9回目を迎える本企画に、塚田さんをゲストとしてお迎えし、在宅医療における管理栄養士の可能性について語っていただいた。(記事・写真=佐藤健太)

塚田さん(左)と小原さん

 

管理栄養士を在宅医療に参画させる理由

小原さん 塚田先生は開業して以来、管理栄養士を参画させた医療に注力してきました。その理由をお聞かせください。

塚田さん 私のクリニックでは褥瘡で悩む患者さんのもとに医師と看護師、管理栄養士、作業療法士のチームで出向いています。多くの事例を持っていますが、チーム医療で対応すると、患者さんにとって非常に良い結果に結びついていることがわかります。これが、私がチーム医療に取り組んでいる大きな理由です。これは在宅医療に限らず、病院でも同じことが言えます。

現在は、在宅患者訪問看護指導料や在宅患者訪問栄養食事指導料など報酬がつきますが、かつては医師のみに報酬がついていました。しかし、チーム医療で在宅に取り組むと良い結果になることが徐々にわかってきて、「在宅では栄養管理が大切」「チームとして行くのが重要」として、厚生労働省から「管理栄養士も在宅に行ったほうがいい」と打診された例もありました。

現在、私が理事長を務めている「日本褥瘡学会・在宅ケア推進協会」もそうした話を受け、報酬がつかなくても在宅医療に取り組んできた管理栄養士の事例をまとめ、資料として提出したことがあります。その取り組みが認められ、チームで行う在宅褥瘡管理で管理栄養士が報酬を得られるようになる後押しになりました。在宅医療だけではなく、厚労省も役立つところには報酬を与えたいのですが、根拠となるようなデータがないために議論まで発展しないというケースが多々あるように思います。

私は「医療はボランティアではいけない」と思っています。医療従事者の全員がボランティア精神を持っているわけではないですし、患者さんのためになる医療を広く行き渡らせるためには、制度化し、労働に見合った報酬を設定しなければ長続きしません。「ボランティア」「無料奉仕」に頼る医療制度はあってはならないものだと思います。

 

一人の管理栄養士との出会いと在宅チーム医療栄養管理研究会の立ち上げ

小原さん 私と塚田先生とのご縁ですが、私がウエルシア薬局で「在宅医療連携室」に配属していた時のことです。富山県では「在宅訪問薬剤師」という業務がまだまだ進んでいない状態でした。

その時に、塚田先生の「高岡在宅褥瘡研究会」が素晴らしいという情報を頂き、研究会への参加を起点に、在宅関連の皆様とお繋がりを持ちたいと思いました。最初のご面会が研究会の参加ご依頼であり、「飛び込み営業」のような形でしたので、(変わった薬剤師だなあ)と思われたかもしれないと思っております。

研究会に参加させていただいたところ、まさにチーム医療で一つの症例を多角的に解決していくシーンに驚きました。それだけでなく、私が当時困っていた重度の褥瘡患者さんのスライドを取り上げて頂き、処置方法等のディスカッションまで行っていただきました。都内に戻ってから、ご一緒している訪問診療医に症状の見方と、薬剤の使用方法をお伝えした時の医師のお喜びと、患者さんの経過が良好になったことは、とても嬉しかったことを憶えています。

管理栄養士と塚田先生の出会いと、医療現場で管理栄養士に求めたい役割をお聞かせください。

塚田さん かつて私は「管理栄養士は病院や学校で提供される献立と食事を作る人」だとばかり思っていました。以前から、高齢者の在宅医療において、栄養は非常に重要だということがわかっていましたが、その考えが管理栄養士という存在と結びついてはいませんでした。

病院では栄養をつけようとすると栄養剤などでいくらでもつけることができますが、在宅医療においては、どう対応すればいいのか理解している人は少ない状況です。栄養剤を処方し、摂取すれば計算上のカロリーは上がるという程度でした。

1999年のある日、セミナーでの講演を頼まれました。このセミナーに登壇した管理栄養士の話を聞き、ただただ愕然としました。管理栄養士はメニューを考える人ではなく、「いかに口から食べさせるかの専門家」であるということがわかり、「管理栄養士というものはなんという能力を持っているのだろう」と感激しました。

これがきっかけで私は「管理栄養士は絶対に医療現場で役に立つ」と考えるようになりました。講演した管理栄養士から「新しく研究会を作るので、ご一緒しませんか」と話をいただき、訪問栄養指導普及と管理栄養士のスキルアップを目的とした「在宅チーム医療栄養管理研究会」の初代の立ち上げメンバーになりました。1999年にスタートした研究会ですが、現在も2ヶ月に1度開催されており、もちろん私も参加しています。

医師や歯科医師、作業療法士など様々な職種が集まる研究会なのですが、そこに集まってくる管理栄養士は、皆さんパワフルな人ばかりで、しかも在宅医療に携わっている人が多くいました。在宅医療の現場で栄養評価をし、経口で栄養改善をする多くの事例を出してきてくれましたので非常に勉強になりました。

小原さん こうした背景があり、塚田先生は管理栄養士を積極的に取り入れ、育成してきたのですね。栄養の専門家として、これからは益々欠かせないパートナーになると私も思います。特に、高齢者の在宅支援で、褥瘡は比較的遭遇しやすい疾患の一つです。

例えばヘルパーさんが入浴介助の時に見つけるケースや、家族が気づくケースなど、「見える疾患」だけに医療従事者以外が発見することもあります。しかしながら「褥瘡」の専門医というのは非常に少ないと感じています。おそらく命に関わることが比較的少ないという事もあると思いますが、他の疾患が原因で発症することが多いという事もあると思います。

塚田先生は日頃より「褥瘡治療の中心は栄養とポジショニング」と仰っていますが、病院で日常的に行われる栄養管理は、自宅ではなかなか難しいのが現状です。そのため、栄養ケアが滞ってきた場合、在宅支援の患者さんはあっという間に褥瘡が出来る可能性を秘めています。

私の知る限りでは、靴下のゴムで褥瘡になった患者さんがいました。そのくらい身近な疾患なのだと感じました。住み慣れた場所で、安心して暮らすことが出来るよう、私たち医療従事者は在宅支援にも積極的に関わることはとても大切ですが、塚田先生の実践方法、理念、そして管理栄養士への気づきは素晴らしいと感じていました。

塚田さん クリニックを開業して間もなかった私は、管理栄養士を募集し、一緒に働いていただくことになりました。現在はご高齢となり退職されましたが、そこで出会った管理栄養士も非常に優秀な方でした。

医療では「何をしてあげたいか」という気持ちが大切

小原さん 塚田先生は在宅医療の現場で管理栄養士にどんなことを求めていますか。

塚田さん まずは評価してもらうところです。医師の評価は採血であり、在宅では結果が出るのはいくら早くても翌日になってしまいます。ですが、管理栄養士はその場で聞き取り、「1日に500kcal、タンパク質は20g、水分は700mlしか摂取していません」と立ちどころに計算してくれます。この能力を持った職種は他にいませんし、「この人は低栄養かつ脱水症状で、このままだと2、3日が精一杯」ということがわかります。すぐにそれを改善してもらえばいいわけですので、非常に役立つ能力だと思います。

さらには管理栄養士は患者さんの「何が好きか」「どんな形状食形態なら食べられるか」など食習慣を聞き、その場で試し、介護する方に指導できる能力を持っています。同時に嚥下能力などを見ているのですから大したものです。その後、毎日連絡し「何が食べられて、何が食べられなかったか」などを聞き取り、介護する方が取る行動をブラッシュアップしていく。これは医師や看護師には真似できない仕事です。

小原さん 現在、ドラッグストアも管理栄養士を積極的に採用していますが、まだまだ明確な役割は見えてきていないと思っています。最近では、各社で管理栄養士監修の製品も出てきています。しかしながら、実際にお客様がその製品に価値を見出し、ご利用いただく形を作るには「管理栄養士ってどんな相談が出来る人?」というのが、今以上に見えてくると良いと感じています。

同時にドラッグストアには、健康を支える製品が沢山あります。日常の食事に「ちょい足し」出来るような提案や、専門職に向けた栄養ケア提案もできるようになることが、健康サポート薬局の役割の一つになるのではないかと思います。ドラッグストアに勤務する管理栄養士にメッセージをいただきたく思います。

塚田さん 管理栄養士には様々な方がいますが、同じ水準の教育を受けてきましたので、一定レベルの能力を確かに持っています。受けた教育も大切ですが、患者さんなどの対象者に「何をしてあげたいか」という気持ちが大切。気持ちがベースにあって、そこに専門性が上乗せされ、それが改善という結果につながっていくからです。置かれた立場に関係なく「してあげたい」ことをするために、今の自分にできることを迷わずどんどんやっていくことです。他の人に期待したり、置かれた立場に文句を言っても何の解決にもなりません。

気持ちさえあれば、自身の能力・知識で不足している部分に気づくこともできます。熱い気持ちがあるからこそ経験を積み上げるわけで、「してあげたいこと」を目標に実践し経験を積んでください。これは管理栄養士だけでなく、医師、看護師、薬剤師などにも同じことが言えると思います。

小原さん ありがとうございました。

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