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【作り手に歴史あり①】創業90年を迎えたギンビス

「真似をされても、真似をするな」

脈々と受け継がれる創業者の思い

 

今年で創業90周年を迎えた菓子メーカー・ギンビス。これまでギンビスは「アスパラガスビスケット」や「たべっ子どうぶつ」などロングセラー商品を育成し、幅広い世代から支持を得てきた。超高齢社会に突入し、“人生100年時代=健康寿命延伸”への関心が高まり、さらに、新型コロナウイルスの影響による“ニューノーマル”が提唱される昨今、「食と健康」という価値が高まっている。こうした中、ギンビスは「アスパラガス プロテイン」など健康ニーズに対応する新製品を開発するなど、変化対応にチャレンジしながら“100年企業”に向かう。本稿では、ギンビスの歴史を振り返りつつ、新たな取り組みに目を向ける。(記事=佐藤健太)

 

「アスパラガスビスケット」、ロングセラーの第一歩

ギンビス創業者の宮本芳郎氏

 

90年前の1930年、「宮本製菓」の名で東京都墨田区(旧本所区)にて誕生したギンビス。ギンビスは創業者・宮本芳郎氏が夫婦で営んでいた小さな菓子店が源流にある。1945年に銀座1丁目に営業所とレストランを併設した「銀座ベーカリー」を開業し、この銀座の地とビスケットへのこだわりが現社名の「ギンビス」(1974年に社名変更)の由来となった。

現在、ギンビスのラインアップに「銀座」の地名を使った「銀座@ラスク」「ギンザワッフル」などが存在するが、それは「創業者のスピリットを後世に引き継ぎたい」という思いを表現しているという。

同社の中でもロングセラー商品として確固たる地位を築いている「アスパラガスビスケット」は1968年に発売された。同品は、創業者・宮本氏の「真似されても、真似をするな」という経営理念が反映された商品であり、ギンビスを語るうえで避けて通れないストーリーを持つ。これを紹介したい。

「アスパラガスビスケット」

発売の1968年当時、ヨーロッパから多くのビスケットが輸入され、それらはスタンダードな円形や四角形の形状をしていた。国内メーカーはそれを真似るかのようにビスケットを数多く市場に送り出した。

しかし宮本氏は、「真似されても、真似をするな」と、あえて我が道に進んだ。いかに独創的な商品を作るか。そして、いかに日本人に愛される商品を作るか。その思いを追求し、辿り着いたのが「手に取りやすい、そして食べやすいスティック型のビスケット」であった。もちろん細長い形状はビスケットとして斬新であり、味だけではなく「カリッ」とした独特な食感も多くのリピーターを得てきた理由となっている。また、「アスパラガスビスケット」という親しみやすい名は、開発当時高級食材として知られた、野菜のアスパラガスとこのスティック型の形状が似ているからというのが由来だという。

当時ビスケットは甘いものが主流であり、それは今でも変わらない。だが「アスパラガスビスケット」は、一般的なおやつ需要に加えて、大人にもビールのつまみや間食として食べてもらうことを想定して塩味を生かした。これが消費者の味覚に響き、ロングセラーという名誉の第一歩となった。

さらに「アスパラガスビスケット」にはゴマが使用されている。それは「日本人の口に合うビスケットを作りたい」という宮本氏の発想からであり、もともと日本で馴染みが深かったゴマを使うことで日本人が好む風味となり、これもロングセラーとなった要素にもなっている。

1975年、「アスパラガスビスケット」はベルギーのモンドセレクションに出品し、金賞を受賞。名実ともに「世界に認められる日本のビスケット」となった。そして発売から半世紀以上経過した今では、親子3世代・4世代へ引き継がれる商品としてギンビスを支える柱のようなブランドと成長を遂げた。

 

食と健康を切り口とした「アスパラガス プロテイン」

 

50年以上も愛され続けた「アスパラガスビスケット」。かつてからカルシウムや食物繊維など健康志向の原料を積極的に使用してきた。そして2020年3月、「アスパラガス」ブランドに「アスパラガス プロテイン」が新たに追加された。

たしかにヘルスケアを切り口にした食品は増加しており、たくさんの健康素材が存在しているが、そこでギンビスがプロテインを選んだ理由は、非常に大きい社会的意義がある。

昨今、粉末タイプのプロテイン市場は堅調に推移しており、それらを使用している層はハードに運動するアスリートやスポーツジムを利用する若年~壮年層などとなっている。しかし、ギンビスは「普段の生活で気軽に健康を意識したいというニーズが出てきており、これに対応したい」と考えた。「アスパラガス」という幅広い層に愛されるブランド力を生かすことで、そのニーズに応えられるとギンビスは「アスパラガス プロテイン」の開発に向かったのだ。

高齢化率が高まりつつある昨今、「フレイル(虚弱)」という問題が浮かび上がっている。そんな中、アクティブシニアがフレイル予防に向かう“窓口となる商品”として「アスパラガス プロテイン」は有力な候補と位置付けられる。それは「アスパラガス」ブランドの主要購買層は50代以上であり、これからフレイル予防に取り組むべき層のど真ん中であるからだ。

高齢者以前から「気軽に健康素材を」ということを意識させ、習慣化させることが健康寿命延伸に繋がり、それが「崩壊寸前」という声が日ごとに大きくなっている公的保健制度の持続にも寄与していくと考えられる。

ギンビスは「3食しっかり食べ、適度に運動すること最も大切と言うことは当社も認識している。これを前提としたとき、普段のおやつをプロテインが入った『アスパラガス』に切り替えるなど『健康に長生きしたい』というニーズに対してのトライアル製品として役立ててもらいたい」と話す。

「アスパラガス プロテイン」は、従来の「アスパラガスビスケット」と味を変えない工夫が施されており、今まで慣れ親しんできた消費者でも違和感なく切り替えられる。同じ味、同じ食感でありながらプロテインを意識したおやつの時間を過ごせるという特徴を持っている。

「アスパラガス プロテイン」

まだ発売から数カ月だが、「徐々に採用企業が増えており、今後の期待も大きくできる」とギンビスのマーケティング担当者が初動について明かす。一方でドラッグストア業界は「食と健康」というキーワードで食品拡充を実施し、スーパーマーケットやGMSなどの異業態と差別化を図れるような食品ラインアップで勝負しようとしている。

その武器として「アスパラガス プロテイン」がドラッグストアにおいて非常に有用な商品であり、ドラッグストアはこれまでギンビスが育んできた「アスパラガス」ブランドを活用することで、より身近で、より生活に取り入れやすい「食と健康」を消費者に提案していけるようになると考えられる。

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