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【連載】10兆円産業化目指すドラッグストアの今昔物語⑨

ウエルシアHDを日本一に導いた初代会長の鈴木孝之さん、その3

「成長の秘訣は社内に派閥をつくらないことだ」

(記事=流通ジャーナリスト・山本武道)

 

M&Aの癒合で相乗効果が生まれ新たな価値の創造が始まる

埼玉県東大宮にあったウエルシア関東の応接間で、鈴木さんに何度か目のインタビューをさせていただいたなかで「会長、企業規模は大きくなり躍進に次ぐ躍進ですが、日本一のドラッグストアを目指し急成長してきた秘訣は?」とお聞きした。

即、次のような答えが鈴木さんから返ってきた。

「山本君、それはねえ、社内に絶対に派閥をつくらないことだよ。創業者の経営哲学も、経営方針も、売上げ規模も、人財教育なども異なる企業が一緒になるということは、両社のスタッフが同じ目的に向かって前進すること。職場に働くスタッフの間には、絶対に派閥をつくってはならない」

両者の人財が融合することによって相乗効果が生まれ、新たな価値が創造されていくことを、鈴木さんは望んでいたに違いない。

「グループ化すればするほど、派閥が生まれないような人事配置をすることが大切です。ですからM&Aされた側のスタッフを、会社の規模に関係なく優秀な人財を登用し、ともに当社が成長していくため、移籍したスタッフも企業の中心人物になるよう仕組みをつくらなければならないからです。そのためにも、M&A後の社内体制づくりは鈴木会長と二人で再三にわたり話し合いました」語るのは、鈴木さんから次代の経営を任された池野隆光会長だ。

池野さんは、鈴木さんがイオングループ名誉会長岡田卓也さんに残した、「日本一のドラッグストア企業を目指すこと」の実現に向かい全力を注いでいった。鈴木さんから池野さんへと引き継がれる意思歴史を辿れば、鈴木ファーマスィ時代、グリーンクロス時代、いいのドラッグとの合併・・・ウエルシア関東時代、グローウェルホールディングス時代、そして現ウエルシアホールディングスへと時代の変化に伴い、M&Aによって優秀な人財を得て生活者の支持を得てきた。

「M&Aを進めるにあたって、何しろ決断が早かったし、鈴木会長の会社と私の会社が合併した際にも、私が提案すると、『そうしよう』とすぐに決断された。鈴木会長のいいところは、すぐに物事を明確に判断して実行することでした。判断ができるということは、考えがある程度まとまっているからです。従って、合併後の会社の方向性が明確に打ち出されました」良いことは即実行する鈴木さんの意思は、池野さんに引き継がれた。

 

本社の応接間に掲げられる鈴木前会長直筆書『以差別化不戦而勝』

『以差別化不戦而勝』。創業者の鈴木孝之さん直筆の書が、本社の応接間に掲げられている。「差別化をもって戦わずして勝つ」ことだ。激しい競合化の波が押し寄せ、同質的経営が目立つドラッグストア。他社と同じ路線を走れば競争に負けてしまう。ウエルシアでは、池野会長とともに、かつて鈴木ファーマスィの社員だった水野秀晴さん(現取締役副会長、前代表取締役社長)、寺島薬局の社長も務め現代表取締役社長となった松本忠久さんをはじめ役員と全社員が、この書をスローガンに日々の業務に取り組んできた。

左からウエルシアHD・池野会長、水野副会長、松本社長

2014年3月、ウエルシアをこよなく愛した鈴木孝之さん(76歳)がお亡くなりになった。「日本一のドラッグストア」づくりが実現したのは、鈴木さんが亡くなられてから1年6か月後の2015年9月だった。小さな薬局の経営者が描いていた路線は、池野会長、水野副会長、松本社長らによって受け継がれ日本一のドラッグストアづくりを達成したウエルシアホールディングス。将来の1兆円企業を目指し、理念を共有できるドラッグストア企業との統合、提携も進めていく方針だ。

(次回はサンキュードラッグ創業者の平野清治さんを紹介します)

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