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【連載】10兆円産業化目指すドラッグストアの今昔物語⑧

ウエルシアHDを日本一に導いた初代会長の鈴木孝之さん、その2

「調剤と介護、将来急速に進むだろう 在宅医療にも力を入れるべき・・・」

(記事=流通ジャーナリスト・山本武道)

 

多くの人財を採用し店舗を増やし成長の陣頭指揮に・・・

北京で開催された中国チェーンドラッグ企業経営者が参加したセミナーに招かれた鈴木孝之、今川美明両会長の講演は大成功だった。小さな薬局からウエルシア関東へと成長してきた軌跡、そして良き経営者たちの出会い、M&Aなどを紹介した鈴木会長、今川福祉グループを立ち上げに成功した今川さんの話は、私にとっても初めての大変興味深い内容だった。

記者会見での鈴木さん(後ろにはウエルシアHD現会長の池野隆光さん)

企業のサクセス・スタディは、誰が聞いても参考になる。懇意にしていただいている急成長企業は、毎週月曜日に新製品の企画会議を欠かさず行い、数々のヒット商品を登場させてきた。1年間にデビューする新商品は600を超し、大ヒット商品になる事例は少なくない。

「相次いでヒット商品を出されていますが、他社に真似されませんか?」お聞きしたら、「真似されても構ない。われわれは、その先のことを考えているし、当社の企業哲学と開発技術、人財は全体に真似することはできないから・・・」の答えが返ってきた。

ウエルシア関東も、次々と店舗を増やしてきただけでなく、多くの人財を採用し、鈴木さん自らの目で店舗の状況を見て回った。欠品がなく生活者が快適で健康な生活を過ごすことができる“サポート役”としての機能を果たしているかどうかを確認するためだった。

 

2号店の調剤室で取材の途中に保健所の係官が来店

香港~北京行きを契機に、取材にかこつけて当時、埼玉県の東大宮にあったウエルシア関東本社に行き、鈴木さんに再三お会いするようになった。顧みれば、鈴木さんとの出会いは2号店として出店した鈴木ファーマスィーの取材だが、鮮明に覚えていることは、話をしていただいた場所が調剤室だったことだ。出店したばかりだったために、製薬メーカーや卸からたくさんの商品が届き、事務所は足の踏み場がなかった。ただ調剤室だけは整備されていたので、鈴木さんは新米記者を招き入れたのだと思う。

話しの途中で来客があった。地元の保健所の担当員だった。新しい店舗の開設にあたって設備が整っているかをチェックしにきたのだった。「今、新聞社の取材を受けている最中なので、しばらくしてから来てくれませんか」と、取材を優先していただいたこともあった。話しの主体は、処方箋ビジネスへのチャレンジと、生活者から喜ばれ愛される店づくり。笑顔で将来を語る鈴木さんの温かい人柄に触れるたびに、ウエルシアは、この先どのように成長していくか、いつしか引き込まれていった。

 

良いと思うことは即決断実行し、成長へと導いた

「TIMEISMONEY」の時代。経営者には、先を見る目と決断力・実行力が欠かせない。鈴木さんも同様だった。「これからのドラッグストアは処方箋調剤と介護、そして将来、急速に進むであろう在宅医療にも力を入れるべき・・・」ウエルシアの方向性を語った鈴木さんの即決断と行動力を見せていただいたことがあった。9年前のことだった。「私がコーディネイトしている『ハワイ在宅医療&HITビジネス成功の秘訣を学ぶ』視察へのご参加いただけませんか?」鈴木会長にお願いした。HITとは、HOMEINFUSIONTHERAPHY(家庭における輸液療法)のことだ。その第1回目の視察ツアーにお誘いした。

すると鈴木さんは、携帯電話でどなたかに連絡された。「今、すぐ応接室にきなさい」呼び出されたスタッフは、仕事に出かけようとしていた当時、ウエルシア関東の介護部長だった竹下正江さん(後に寺島薬局社長に就任)。「山本さんのところのハワイ視察に行きなさい」。何も知らされずに駆けつけた竹下さんに一言。竹下さんは視察に参加された。

メンバーは、当時、CFS社長の石田健二さん、龍生堂本店社長の関口信行さんにアインファーマシー会長の今川さん、そして千葉薬品からは腰痛の齋藤茂昭さん(顧問)の代理でご長男、ドラッグストアの幹部ら15名。ホノルルのファーマケア社訪問と薬剤師経営者からサクセス・ストーリーを学び、無菌調剤室を導入しているスペシャリティ・ファーマシーの現場視察。ウエルシアに無菌調剤室が導入されたのは、それから間もなく。

ドラッグストアの将来像を見据えていた鈴木さんは、処方箋調剤や介護とともに、在宅医療にも目を向けられていたのだ。鈴木会長の路線を受け継いだのが現ウエルシアホールディングス代表取締役会長の池野隆光さんだ。ある日、鈴木さんにアポイントを取り、取材でお会いすることになった。本社を訪れた日、鈴木会長は、役員を同席された。そこで初めてお会いしたのが池野さんであった。

(次回に続く)

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