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【記者の目】コロナで揺れる消費者、そしてドラッグストアの今

「デマはデマ」と言わないドラッグストア

紙製品の“不安定供給”に拍車をかける

2020年2月のドラッグストア店頭を振り返ると、いわゆる“コロナ特需”で売り手も買い手も混乱を極めた。新型コロナウイルス感染を予防するためのマスクや消毒液はメーカー欠品。毎朝ドラッグストアの店先には、入荷される少量の予防関連品を買い求めようと消費者が行列を成し、消費者同士で暴力沙汰が発生したこともあった。行列に並んでも手に入れられなかった人もいた。

さらに、SNSのデマによりトイレットロールやティッシュペーパー等の紙製品が飛ぶように売れ、各店ではマスク・消毒液と共に開店数分で品切れになる事態となった。しかし、デマをデマとして周知しようと努力するドラッグストアは限りなく少なかった。売り場に「お客様へ ティッシュペーパーは種類に関わらず、お1家族様1点までとさせていただきます。多くのお客様がお買い求めいただけるよう、ご理解ご協力をお願い致します」と掲示する店舗が大半だったが、むしろこれは来店客に「今、紙製品は貴重」と誤解を与え、消費行動を煽っているようにも受け取れる。「売れるから売る」というドラッグストアの姿勢が不安定な供給に拍車をかけたのは間違いない。

一部のドラッグストアでは「これはデマです」とPOPを通じて来店客に情報を流していたが、どんなに一部が正しい行いをしても、大多数が野放しにしていたら消費者の間違った消費行動に歯止めをかけることはできない。

もっとドラッグストア業界全体で何とかすることはできなかったのだろうか。「今回は直接的に症状や身体への影響にかかわらない紙製品だったから良かったものの、これがOTC医薬品だったら…」と考えると、デマをデマと言わなかったドラッグストアは、自身が持たなければならない社会的役割に反しているように思える。

この記事を執筆している3月19日時点で紙製品はもう少しで一段落がつきそうだが、マスク・消毒液に至っては、政府が増産を要請しているものの正常な流通の兆しは見えない。

 

“コロナストレス”に疲弊する消費者

ドラッグストアは何ができるのか?

2月、筆者は店頭の現状を確認すべく何度も何度も朝のドラッグストアに訪れた。そうしていると“行列の常連”を認識できるようになる。その一人の高齢女性に聞くと、「目先1か月分のマスクは入手しています。その先の分がなく、不安だから並んでいるんです」と話す。コロナに対する不安を、1カ月後のマスクを入手することで埋めようとしていた。

50代主婦は「花粉症の夫がつらそう。それは症状だけではなくて、コロナ特需の影響でマスクがつけられなかった日に、電車で軽くせきをしただけで周囲から睨まれ、降車したと聞きました。そういう思いをしてもらいたくないから、せめてマスクを手に入れないと」と家族への思いを明かした。

行列に並んでも入手できなかったことを店頭スタッフに怒りをぶつける“モンスター消費者”は、確かに存在した。しかし行列を成している99%以上の消費者は、多くの不安や悩みを持ちながら“コロナストレス”に疲弊し、解消しようと必死になっている。それに「何とかしてくれる」と期待されている小売り業はスーパーでもコンビニでもなく、ドラッグストアだということは毎朝毎朝連なっている長蛇の列を見ると容易に理解できる。

こうした人たちに、物販以外で何かできることはないのだろうか。手洗い・うがい・マスクは予防において有効なのは間違いないが、それと同時に生活習慣の正常化や免疫力を高めることも非常に大切であり、日ごろの食生活が大きな影響をもたらす。この部分を消費者に対し、コロナ対策の1つの柱として提案したいところだ。

現在日本チェーンドラッグストア協会は「食と健康」をキーワードに、他業態では確立しにくい健康を前面に出した“ドラッグストアならではの食提案”に向けて取り組んでいる。これを“単なる業界団体の取り組み”として見過ごすのではなく、自社に取り入れることが、もう一つのコロナ対策に繋がっていくというビジョンを持つべきだろう。

「月刊H&Bリテイル」編集部 佐藤

 

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