健康食品情報や機能性食品ビジネスの最新トレンドを配信

ARCHIVE
記事

【記者の目②】DgS勤務の薬剤師・小原道子さんが介護分野で博士号(薬学)取得

“在宅医療とドラッグストア”のシンボル的存在

「小原さんが博士号を取ったって!」

数日前、そんなニュースが飛び込んできた。「小原さん」とは、「小原道子さん」のことで、ウエルシア薬局に勤務し、在宅医療・介護の推進と地域医療との連携に取り組む一人の薬剤師だ。

現在は日本ヘルスケア協会の理事も兼任し、ウエルシア薬局ではない他ドラッグストア企業の女性の若手薬剤師からも「小原さんを尊敬しています。いつも薬剤師がどう地域に入り込んでいくか本気で取り組んでいく姿は、同じ薬剤師として『かっこいい』と思っています。いつか小原さんのような薬剤師になりたい」と憧れを持たれるほど、今では“在宅医療とドラッグストア”という分野のシンボル的存在になっている。

思い返すと、ぼくが小原さんの存在を知ったのは、当時ウエルシア関東で部長を務めていたSさんに在宅医療の取材に連れて行ってもらったときだ。2013年のある日、居宅と施設を巡回するドクターと共にウエルシアの薬剤師が同行する現場を取材した。その帰り道、S部長が運転する車に揺られながら「ウエルシアの薬剤師ってレベルが高い仕事をしていますね」と話すと、「いや、あの人も頑張ってくれるけど、もっとすごいヤツがいる!」と…。その“すごいヤツ”が小原さんのことだった。

ぜひお会いしたい旨をS部長から伝えてもらい、その数カ月後ようやく小原さんと面会することが出来た。「チャーミングで前向きで、バイタリティに溢れている」というのが初めてお会いしたときの印象だが、それは今でも変わらない。いや、「“誰よりも”チャーミングで前向きで、“誰よりも”バイタリティに溢れている」に、ぼくの中の小原さんは進化している。その日、いろいろ情報を教えていただき、後日取材をさせてくださることになった。

 

在宅医療最前線における工夫と笑顔、気遣い

初めて小原さんを取材したのは埼玉県三郷市の「みのりホーム」という難病高齢者をケアする看護施設(住宅型有料老人ホーム)だった。みのりホームには、気管を切開し、呼吸すらもままならない、まさにいつ亡くなるか分からない終末期の高齢者が多数入居していた。

みのりホームは鈴木夢都子さんという施設を立ち上げた看護師をトップに、地域・在宅医療や多職種連携に造詣が深い駒形清則医師、ケアマネジャー、そして薬剤師である小原さんが一丸となり、チーム医療で入居者である患者をサポートしていた。まさに“在宅医療の最前線”だった。正直「こんなにも重病な患者に、ドラッグストアの薬剤師は一体何が出来るのか?」と思ってしまった。

もちろん、夢都子さんと駒形先生の働きぶりは目からウロコが落ちるほど素晴らしいものだった。小原さんは看護師に薬の使用状況や服用させる際の悩みなどを聞くことに加え、診療後に患者のもとに行き、明るく話しかけ、患者の表情や四肢が少しでも動いたら満面の笑みで手を握り「また来ますね」と一人一人に語りかけていった。殺伐としていた“在宅医療の最前線”が一瞬にして和やかなムードに変わった。

薬剤師は“薬のプロ”であり、その知識を生かして国民に貢献していく仕事であるが、在宅医療における薬剤師の役割は「薬に関することだけではない」ということを、小原さんが教えてくれた。

小原さんが初めて在宅医療に携わったのは90年代半ばだったという。当時薬局に勤務していた小原さんに、あるドクターから「薬が飲めなくて困っている患者がいる」と相談を持ち掛けられたことが在宅医療のデビューとなる。まだ全くと言っていいほど在宅医療が進んでいなかったころだ。

山村の藁葺き屋根の家に独りで住む全盲の患者だった。ある病気を患っており、数種類の薬が出されているが、目が見えないことから服用できない。この患者に何とか薬を飲んでもらうことが小原さんのミッション。そこで小原さんは工夫した。牛乳パックを加工し、その中に薬を入れ、振ると出る音で、「今この薬を飲む」と識別できる環境をつくった。それ以降、患者も服薬に対して前向きになった。小原さんは自分が工夫することによって、在宅医療の現場で成功する手応えを感じていった。こうした実体験が、今でも小原さんの在宅医療に対する姿勢として生き続けている。

 

在宅医療に対する確固たる信念

在宅医療推進に注力する日々だったが、ある日、小原さんは健康診断によって乳がんと診断された。ここは「月刊H&Bリテイル」4月号(4月1日発刊予定)の8~9面に小原さんのインタビュー記事が掲載されているので、発刊されたらお読みいただければと思うが、一人の人間として非常に大変な思いをしただろう。

そんな小原さんが、今般、介護分野における臨床学位論文で岐阜薬科大学から博士号(薬学)を取得した。在宅医療の現場を大切にし、がんと闘病しながらも学位論文を提出し、それが認められ博士となった。「誰よりもチャーミングで前向きで、誰よりもバイタリティに溢れている小原さん」だからこそ成し得た偉業だと思う。小原さん、おめでとうございます。

2014年に取材した小原さんのインタビュー記事を読むと、今の小原さんの姿勢と全く変わらない。仕事に対していつまでも変わらない姿勢を貫くことは、確固たる信念があるゆえだ。小原さんが貫く在宅医療への信念を追い、切り開かれたその先を正しく記録していくことが記者としての仕事であるような気がする。

いつも全力かつ笑顔で地域医療の推進に取り組む小原さん(右)

「月刊H&Bリテイル」編集部・佐藤

一覧に戻る