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【スペシャル対談】SBIホールディングス・北尾吉孝社長×日本ヘルスケア協会・今西信幸会長

“経済界の巨人”が抱くヘルスケア領域への思い

人生100年時代、健康長寿と共に重要なのは“資産長者”

 

 今回で4回目を迎える日本ヘルスケア協会・今西信幸会長の対談企画は、SBIホールディングスの北尾吉孝社長に登場していただいた。SBIホールディングスといえば“金融コングロマリット”というイメージを持つ人は多いが、積極的にバイオ関連事業を展開しているという一面があり、5-アミノレブリン酸リン酸塩(通称:ALA)を用いた商品を上市し、ドラッグストア業界から高い評価を得ている。そこで「なぜヘルスケア領域なのか?」と素朴な疑問が出てくるが、この対談でその謎が解き明かされた。ALA関連事業をグループの今後の成長分野と位置づけ、グローバル展開を視野に長期にわたって育成してきた北尾社長。ヘルスケア領域に対し、どのような視点・考え方を持っているのか。今回語られたALA関連事業を含めたヘルスケア領域への取り組みと今後のビジョンの根幹には、「世のため、人のため」という北尾社長の志があった。

(記事・写真=佐藤健太)

 

仕事をする大前提は「世のため、人のため」

今西会長 かつて私は、北尾社長に“経済界の巨人”というイメージを持っておりましたが、ALAを配合した機能性表示食品等のサプリメントを製造するなど、ヘルスケアに向けてもとても積極的な方だと知りました。ぜひ北尾社長が持つ“ヘルスケアに対するビジョン”をお聞かせいただきたいと思い、今日は伺いました。

北尾社長 私がバイオテクノロジーをはじめとしたヘルスケア分野に関心を持っているのは、高校時代に「将来は分子生物学に関わる仕事がしたい。研究者としての道を歩みたい」という夢を持っていたという背景があるからです。当時、慶應義塾大学の医学部に渡辺格教授という先生がおり、分子生物学の第一人者として著名な方でした。渡辺教授から分子生物学を教わり、その道を研究したいと思っていました。残念ながら受験では合格できず、同じ大学の経済学部に入学することになりました。したがって、今に始まったわけではなく、医学領域については社会人としてのキャリアをスタートさせる以前から興味がありました。

すべての人間は必ずどこかで死んでしまいます。だからこそ「死ぬまではできるだけ健康でいたい」と多くの人々は望んでいるのです。私は仕事をする大前提として「世のため、人のため」という志を持っており、「どうすれば健康でいられるのか?」ということを常日頃から考えて仕事と向き合ってきました。

その延長で「歴史上、人類の健康増進に役立ったもの、あるいは寿命を延ばすことに役立ったものを3つ挙げるとしたら?」と考えました。

その1つはおそらく「石鹸」でしょう。現在、新型コロナウイルスが流行しており、「手洗いが予防に良い」と盛んに言われていますが、やはり衛生とそれに対する国民の意識は健康維持には不可欠です。

そしてもう1つはアンチバイオティクス(抗生物質)。これまでの人類の歴史は、抗生物質と新たな細菌との戦いといっても過言ではありません。新たな細菌が蔓延するたびにその細菌を撃退できる抗生物質を開発。しかし、それに耐性をつけた細菌が発生。また新しい抗生物質を開発する、といった具合です。比較的豊かな日本では、医療機関にかかることで簡単に抗生物質を入手することが可能です。しかし、アフリカなどでは抗生物質が飲めないために多くの人々が亡くなっているという現状があります。

最後の1つはステロイド。「炎症を抑える」という意味では、ステロイド以上のものは無く、多くの人々がたくさんの病気から救われてきた歴史があります。

こうしたことを自分なりに考え、「そしてこれからは?」と見据えると、抗体医薬の分野だと考えています。この分野では本庶佑先生のがん治療薬「オプジーボ」(免疫チェックポイント阻害薬)が希望の光として注目されており、人によっては顕著に効果が表れているようです。

抗体医薬を一例に挙げましたが、健康を持続させ、病気から回復していくには、やはり免疫力を高めることが何よりも大事なことだと考えています。もし罹患しても、体に悪影響をおよぼす細菌や細胞をはねのければいい。それは、がんであろうと新型コロナウイルスであろうと同じことが言えます。「一体、何が免疫力を上げるのか?」と、随分いろいろな本を読んで考えたりもしました。

もう1つ注目しているのは老化現象です。もし、老化のスピードを落とすことができたら、それ自体が免疫力の強化になると考えています。免疫やアンチエイジングなどの分野に関しては比較的早くから関心を持ち、今でも新しい論文が発表になるたびに、動向をうかがっている状況です。

 

“治療第一主義”が起因するヘルスケアの課題

今西会長 私は理科系の人間でありますが、北尾社長の発言の節々から文科系の人とは違う匂いを感じており、今日その理由がよく分かりました。北尾社長は文科系・理科系で分けられる人ではありませんね。

医学部以外の人たちは死と向き合うこと機会が少ないですが、北尾社長は人間の本質的な部分を含めて“人間の生き方”を色々と考えていますね。SBIグループがALAに取り組んできた理由についても、北尾社長が歩んできた背景を知ることでより理解することができました。

日本の医療は「治療にあらずは、医療にあらず」「保険にあらずは、医療にあらず」という治療第一主義という側面があります。これまでは、こうした形の医療は成功してきたのですが、経済的な面で大きな課題を持っています。

高齢化の進展により、公的医療費が43兆円にも膨れ上がり、医療費だけでオーストラリアや韓国の総国家予算を超えている…。日本の公的医療制度はとても素晴らしいものだと思っていますが、今後もこれを維持していくためには私費を使った予防に力を入れざるを得ません。

たとえば、ある種の希少な病気に効果を発揮する1億6,000万円の薬があり、その患者は年間20数名います。こうした疾患に対応する薬が開発されればされるほど、公的医療制度を維持するのは難しくなります。こうした環境下、一部の医師等の医療人は予防に目を向け、しかも、できる限り公費を使わない方向での予防について考えられつつあります。日本ヘルスケア協会はこうした考え方の医療人が増加していることをチャンスと捉え、エビデンスを確立しながら予防で貢献したいと思っています。

平均寿命は男性81歳・女性87歳です。一方で、ここ数年は自立した生活を送れる「健康寿命」と言うキーワードが出てくるようになりました。男性では9年間・女性では12年間、平均寿命と健康寿命に差があります。この乖離を無くしていくためには、エビデンスを重要視した予防へのアプローチが重要になってきますが、北尾社長は予防やヘルスケア領域に向けてどのような考え方をお持ちでしょうか。

予防に取り組むことは免疫力を高めること

北尾社長 江戸時代の本草学者(主に中国で発達した医学に関する学問)である貝原益軒(かいばらえきけん)が書いた『養生訓』を見ると、当時から予防医学的なことが知識として得られており、「予防医学」の考え方は昔からあるものだと分かります。現在日本は、大きな戦争が起こらない比較的平和な状況にあります。ですが、歴史を少し遡ると、第二次世界大戦で一体何人が死んでいったのか。江戸時代以前には国内でもたくさんの戦争があり、死と向かい合っていく中で一種の「死生観」が老若男女問わず醸成されていました。こうしたことを考えると、現代人は安穏と暮らし過ぎて、自身の健康の大切さを忘れてしまっているのではないでしょうか。

新型コロナウイルスが流行する中、夜の街に20~30代の若者たちが行き、自分たちだけではなく他の人たちにも感染を広げています。なぜ自分の生命のみならず他人の生命をも脅かす危険性がある行為を行うのか…。それを止める自制心がないのか…。まだまだ予防という考え方に対する認識が不足している表れでしょう。こうしたことをコロナ禍で考えるようになりました。

予防に取り組むことは免疫力を高めることです。私は、予防によって健康でいる時間を可能な限り長くし、「世のため人のために、何か後世に財産を残そう」という志を持って生きています。その財産というのは何も金銭的なものだけではありません。誰かしらに良い影響を与えられる人間になるために一番大切なのは、健康という要素であるのは間違いありません。

 

北尾社長が私生活に取り入れているヘルスケア

「医食同源」という言葉がありますが、これは食の中に医療を含めた予防を取り入れ、健康を維持していくという考え方です。ところが科学が進歩して新たな医薬品が続々と出てくると、治療ばかりに関心が向くようになってしまいました。例えば新型コロナウイルスのワクチンが望まれていますが、本来免疫力が充実していればワクチンは必要ありません。

私は日々多くの人と仕事で接していますが、20年ほど風邪を引いたことがありません。それは免疫力を高めることに努力してきたからだと思っています。

私はALAだけではなく免疫力を高めるのに良いとされる成分を生活に取り入れています。カカオ85%のチョコレートを朝昼晩1枚ずつ必ず食べ、あるいはアスタキサンチンや低分子のフコイダンを摂取、ビタミンCにおいては一般的なビタミンCではなく持続型のビタミンCを飲んでいます。腸内細菌も非常に大切であり、いかに善玉菌が多い状態を作るか、そのためにロイテリ菌やビフィズス菌、善玉菌の栄養素となる乳果オリゴ糖などを摂取しています。体にとって良い状況をサプリメントの力も借りて作っているのです。

もちろん運動にも取り組んでいます。朝は30分間ウォーキングマシーンの上を2.5~2.6キロ早歩きしています。毎日のお風呂の中でも様々な体操を行い、毎週土曜日には2時間整体に行き、時々そのうちの30分を鍼にするなど、自身の免疫力を上げるのにプラスになることは貪欲に取り入れています。その成果として、この年齢(69歳)になっても「どこか痛い」などの経験はした事はありません。

また、経営トップとして「SBIグループの役員や社員に対しても健康を大切にしてもらいたい」という思いも持っています。役員クラスには無料で年に2回、当グループのSBIメディックの提携医療機関である東京国際クリニックにおいて、徹底的に検診を受けさせています。

社員向けには、新型コロナウイルスに関しての抗体検査を実施しました。東京オフィスにいる社員全員に検査するように指示を出し、約1,600人が受けました。そこで擬陽性の社員にはすぐ肺のCTを取らせ、2週間後にもう一度抗体検査を受けさせました。

社員だけでなく社員の家族の免疫力を高めていくことも考えなければなりません。新型コロナウイルスが発生してからすぐにリモートワークを始めました。

さらにALAをきっかけに免疫力を保つこと、そのためにどのような食生活を送り、どのような成分を摂取すればいいかと関心を持ってもらいたいと思います。

感染症の場合は、きちんと感染者を発見し、隔離することが不可欠です。そして、健常な人には今まで通りしっかりと仕事をしてもらい、感染予防と仕事のバランスを取って経済を上手く回していくことが非常に重要になります。

 

国民皆保険制度の維持には私費による予防が不可欠

今西会長 まるで医学部の公衆衛生の教授の話を聞いているような感覚がします。北尾社長は非常にヘルスケアへの造詣が深く、今日は話を聞くことができてとても良かったと思っています。今後日本は、予防を確実に進めていかなくてはなりませんが、北尾社長はこれに向けてどのような取り組みが大事になってくるかと思われますか。そのアイディアをお聞かせください。

北尾社長 日本には素晴らしい国民皆保険制度があります。世界に誇るべき制度ですが、財政難や薬価上昇などで維持が難しい状況になっています。今西会長がおっしゃるように、予防を推進していくことが不可欠です。しかし、国がお金を出すのでは財政負担がますます増えるため、各自が自己責任で予防に取り組まなければなりません。

そのためには製品を国がきちんと科学的に検証し、機能性を分かりやすく伝え、推奨した上で国民が積極的に摂取していくといった流れを作るべきでしょう。これに近い制度が機能性表示食品であり、私は素晴らしい制度だと評価しています。

当社グループも積極的に機能性表示食品の販売に取り組んでいます。「糖ダウン」や「深い眠り」などです。前者は「糖をダウンする」、後者は「深く眠れる」という訴求の製品であり、分かりやすいネーミングにしました。おかげさまでドラッグストアでの取り扱いが増え、売り上げは好調に推移しています。

 

医療が信頼されてきた理由は客観的評価

今西会長 日本ヘルスケア協会は設立から5年経過しました。設立当初から日本ヘルスケア学会を併設しています。これまでの医療とは異なるアプローチから健康関連の論文や取り組みを発表する場がなく、是非それをしていこうという姿勢からです。

今回の年次大会はコロナの影響で順延しますが、この業界は“言いっぱなし”の部分があるため、「何が真贋か?」を分別する必要があります。「医療がなぜ信頼されているのか?」と問われれば、「客観的な評価ができるから」と答えます。例えばGOTならば「300あったのが50になり30になった」と改善している過程を数字で示すことができるからです。

これほど精細ではなくても、予防において何かの指標が欲しいと思っています。一般の方が健康維持していくためには良い製品と悪い製品を一緒くたにしてはいけません。医療ほど細かなものではなく「赤・黄・青」のようなものでもいいですから、そうした指標が欲しい。

北尾社長がお持ちの見識やノウハウは、日本の公的医療を維持していくために必要になってきます。もし日本ヘルスケア協会の考え方に賛同いただけるのであれば、ぜひ一緒にヘルスケア領域におけるエビデンス確立にお力添えいただければと思います。また、貴社のALA製品について「有効な理由はこうだ」という発表の場として、日本ヘルスケア学会を活用していただければと思います。

 

“日本ヘルスケア協会推奨”の製品があってもいい

北尾社長 お役に立てられるところがあれば、もちろん協力させていただきます。私はヘルスケアという考え方はとても大切なものだと思っており、慶応義塾大学・坪田一男教授が、アンチエイジングについての日本抗加齢医学研究会(現在の日本抗加齢医学会)を作る際に応援しました。なぜならアンチエイジングはこれからの世の中において、人類のためになる分野であり、予防や健康寿命延伸にも関わってくる重要な項目でもあると考えているからです。

仏教に「生老病死」という言葉がありますが、老いてくるということは病気を得ることにつながります。そういう意味でアンチエイジングの領域は応援していくべき分野なのです。アンチエイジングも含め、日本ヘルスケア協会の枠組みでさまざまな学会が誕生し、多角的に予防医学を議論し合うことは大変意味があるものだと思います。

「四百四病の病より貧ほどつらいものはない」ということわざがありますが、松下幸之助さんも貧乏であることはどの病気よりも辛いと言われていました。私も全くその通りだと思います。

現在「“人生100年時代”が到来した」と言われています。もちろん健康長寿に越したことはありませんが、一方でそれを支えていく“資産長者”になることも重要です。資産長寿であれば健康にも良い影響を与え、健康であれば資産形成にもプラスになります。

また、高齢になると当然のこととして脳が萎縮し、アルツハイマー型認知症や血管性認知症が増えていきます。これは老化現象の1つであるため仕方がないことです。しかし脳に障害が出てしまっても、人間としての尊厳まで奪っていくようであってはいけません。認知症に対していかにサポートしていくか…。これもある意味ではヘルスケアなのです。日本ヘルスケア協会は、高齢化が進む日本において役割が増えていくことと思いますが、「こういうことも是非やっていただきたい」と私からお願いしたいです。

予防医学を浸透させるには学会を作り、科学的なデータを活用し、正しい知識を一般の方々に伝えていくことが大切です。それが実現すれば、「偽薬のようなサプリメントに高額なお金だけ使わされた」ということはなくなっていくと思います。

私からのアイディアですが、日本ヘルスケア協会として推奨するという製品があったら良いのではないかなと思います。そのためには権威を付け、さまざまな学会が日本ヘルスケア協会に集えるようにし、そして学会誌のようなものを定期的に出し、それを後ろ盾にしながら“正しい予防”を啓発していくというビジョンです。

“正しい予防”を啓発するうえで大切だと思うのは、サプリメントなど予防関連製品を製造販売する会社のコンプライアンス問題です。現在、消費者庁は積極的に取り組んでいるようですが、いい加減な製品を売っていたら取り締まりを相当厳しくすべきであり、行政だけでなく、日本ヘルスケア協会を含めたヘルスケア関連業界がきちんと対応していただきたいと期待しています。

 

コロナ禍は「ヘルスケア推進のチャンス」

今西会長 一般の方々が本音も建前もなくヘルスケアを取り入れるためには、どうしても原資が必要であり、経済的な自立が絶対に必要になってきます。つい最近までは本音と建前で分けられていましたが、今般の新型コロナウイルスの影響で国自身が本音と建前から脱しつつある今が、ヘルスケア推進のチャンスです。老後の経済的な指標をヘルスケアの見地からも出していく必要があると考えられますが、金融のプロフェッショナルである北尾社長はどのように考えておられますか。

北尾社長 SBIグループもいくつかヘルスケアファンドを作りヘルスケアに従事している企業の株式に投資してきましたが、 それには“目利き力”が必要になってきます。たくさんの製品やサービスが出ている中で、「十分なサイエンティフィックなデータを持っており、効果にも期待できるものを扱っている会社だから、投資をしましょう」というのがないといけませんね。

今回のコロナ禍の影響で製薬会社の株、特にコロナ関係の医薬品やワクチンの開発をしている企業の株価が高騰しているわけですから、特殊な会社を別にしても、地道にヘルスケアという予防的な側面に対応している企業を応援したいと思っています。

 

 

北尾社長の夢「世界中にALAを広め、人々の健康維持に貢献」

ALAが広げるヘルスケア領域の可能性

今西会長 私は昭和22年生まれで、まさに健康寿命の72歳です。平均寿命である残り9年間に向かって「いかに健康でいるか?」というステージで戦っているわけですが、日本ヘルスケア協会と日本ヘルスケア学会の会長として「81歳の平均寿命まで健康でいなければ社会から信用されない」というプレッシャーの中で戦っています(笑)。多少違いますが、北尾社長も私と同じ年齢層ですので、ぜひ81歳の平均寿命までは健康でいていただきたいと思います。

SBIホールディングスの中ではALAを含めたバイオ関連事業の売上は全体の約1%だと思います。ですが北尾社長は、ALA関連事業をグループの成長分野と位置づけ、グローバル展開を視野に長期にわたって育成してきました。なぜヘルスケアに積極的に取り組んでいるのかお聞かせください。

北尾社長 まだまだ私も現役でいなければなりません。しなければいけないことがたくさんあるからです。今目標と考えていることを着実にやり遂げたいと思います。

もともとALAは、コスモ石油・中央研究所で生まれた素材であり、ミトコンドリアで重要な働きをしていると判明していました。1950年代には電子伝達系において重要な役割をしているのではないかと考えられていましたが、大量生産する方法がなく、研究者も非常に高額なものを購入して研究しなければいけないという状況でした。それがALAの研究者・田中徹さんによって、光合成細菌を用いることで発酵法による大量生産に成功し、購入しやすくなりました。

1950年代は細胞の中を研究する方が多かったのですが、ジェームズ・ワトソンによる二重らせん構造の発見以来、研究者の関心事が遺伝子に向いてしまいました。ですが最近はまた細胞の中に関心が戻り、多くの人がミトコンドリアについて研究をするようになりました。

考えてみればALAはヘムの前駆体ですから、鉄と結合するとヘモグロビンになります。全身に酸素を運んでいるのはまさにヘモグロビンですので、ALAは酸素や栄養素を送り続けているという部分で非常に役に立っているといえます。

あるいはリー脳症というミトコンドリア欠損症の疾患があり、発症すると余命は1年4ヶ月~2年とされています。ミトコンドリア欠損症は遺伝性と言われており、この疾患を持って産まれてきた乳児は死んでしまいます。こうした疾患に対して「体内で作れないのであれば、補えばいい」という考え方でALAを飲ませたら…。あるいはALAを作る能力はあらゆる動植物が持っていますが、人間の場合は17歳をピークに作る能力が低減していきます。これを、年齢を負うごとにALA配合のサプリメントで補っていけば…。ここで挙げたのはあくまでも一例ですが、人類に対してALAが役立つポテンシャルは非常に大きいと位置づけています。ですから、私は大切にALAを育て続けてきたのです。

コスモ石油の研究所ではALAを植物に与えると繁茂するということが起きました。大きく形もきれいなトマトが収穫でき、沿岸の砂漠にALAを撒くと作物が育つなど、農業にも肥料として役立っていました。田中さんはその延長上で飼料に活用、最終的に人間のヘルスケアにも活用できるところまで行き着きました。ALAを飲み始めた周囲の研究者からも「よく寝るようになった」「疲れが取れるようになった」などを感想が出てきました。ところがエビデンスが明確になってきたにもかかわらず、役員からは「製薬会社ではないコスモ石油が、医薬品を作ろうとすると多額なコストがかかるため当社ではできない」とされました。

当時、コスモ石油で会長に就任していた岡部敬一郎さんと私は非常に親しい間柄でした。ある日、岡部さんは「北尾さん、コスモ石油には宝物があるんだ」と話され、私は「それはなんですか?」と聞き返すと「ALAだ。でも当社では難しいのです」と言いました。ALAについて徹底的に調べた上で私は、「ALAは当社が引き受けます。当社が20億円拠出しますので、コスモ石油は15%を出してください。お金ではなくてもいいです。原材料を供給してください」と言って共同で会社を作りました。

ALAは、医薬品・健康食品・化粧品・飼料・肥料と5つに使える稀に見る物質です。だから私は事業として取り組みたいと岡部さんに話し、SBIで取り組むようになったというわけです。その後、ALAを取り扱うドイツやカナダの企業を買収し、SBIグループは、世界でも最大級のALA製品を供給する企業になりました。

後にはこれを株式公開したいと考えています。世界中にALAを広め、安価で、多くの方々の健康維持に役立ててもらいたいというのが私の夢でもあります。

今西会長 本日は北尾社長のヘルスケアに向ける熱意を聞くことができ、大変嬉しく思います。ありがとうございました。

 

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