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【スペシャル対談】日本ヘルスケア協会・今西会長×経産省・岩田2025年国際博覧会統括調整官

「ヘルスケア産業」は超高齢社会を支える核

万博で“健康長寿社会に成功した日本”を世界に示す

 

我が国のヘルスケア産業の育成と発展を目的に組織された日本ヘルスケア協会(JAHI)は、3月にJAHIの小原道子理事が薬学博士号を取得するなど新たな協会活動がヘルスケア産業界から注目を集めている。JAHIは、超高齢社会の日本で培われたヘルスケア産業を世界に発信、輸出するという目標を掲げ、「いのち輝く未来社会のデザイン」をテーマとする「2025大阪・関西万博」に共鳴する。今日、JAHI会長の今西信幸氏と経済産業省2025年国際博覧会統括調整官の岩田泰氏の対談が実現した。(月刊H&Bリテイル4月号掲載記事)

今西会長(左)と岩田調整官

 

「いのち」をテーマに掲げた初めての万博

 

――万博と産業界との連携の意義についてお聞かせください。

 

岩田 「2025大阪・関西万博」のテーマは「いのち輝く未来社会のデザイン」で、現在そのテーマを万博でどう展開するかを2025年日本国際博覧会協会が考えています。参加者に豊かな長寿社会における「いのち」の大切さを考えるきっかけとして万博を捉えるならば、「2025大阪・関西万博」とヘルスケア産業や予防・未病も含めた医療が関わり合うことは大変に有意義だと考えています。

当然、健康長寿社会ではヘルスケアは非常に重要な役割を果たすと思いますし、実際にヘルスケア産業に従事されている方には「いのちとは何なのか」「いのちが輝くとは」「豊かな生き方とは」というテーマを、産業・ビジネスの側から考え、提案をしていただき、万博を共に作ってほしいですね。

ですから、ヘルスケア産業側も自分事として考えていただきたいと思います。

 

――過去の万博で「いのち」にフォーカスして、ウエルネス&ヘルスケアを大きく打ち出した開催はありませんでした。

 

岩田 そもそも万博がテーマを明確に掲げるようになったのも、そんなに古い話ではありません。万博は170年の歴史がありますが、最初のころはテーマもなく、基本的には各地・各国の伝統工芸品や産業革命の成果を陳列していました。そこから少しずつ、「モノ」だけ

ではなく、テーマを決めて「来場者が何か考えるきっかけにしよう」という万博に変わってきたのです。その意味で最近の万博で「いのち」をテーマにしたことはないですね。

――世界最先端の超高齢社会である日本が、「いのち」「ウエルネス&ヘルスケア」というテーマを打ち出す意義は、非常に大きいのではないでしょうか。

 

岩田 世界が注目している分野の一つだと思います。これから世界は、日本と同じような高齢社会に突入します。日本はその先にある超高齢社会をいち早く迎えているわけです。一体そこで何が起きているのか、どのようにしてその社会と折り合っているのかは、非常に高い関心を集めるでしょう。それは万博の意義であるとか、私たちが万博に期待する「きっかけ」や「発見」に繋がると思います。

 

――ロゴマークにもあるように、JAHIは健康寿命延伸という大きなテーマを掲げています。ヘルスケア推進母体としての、JAHIの役割をご説明いただけますでしょうか。

 

今西 日本は世界最大の高齢社会です。人口の28%が65歳以上で、第2位のイタリアの24%と比べても、断トツに高齢化率が高い。これに伴う生産性の低下はマイナスですが“健康長寿社会に成功した国”というプラスの面もあります。この見方が非常に大事なことで、常に否定的なことを言うのではなくて、健康長寿社会の成功例を世界に向けて示すべきでしょう。

その1つが、海外での日本食ブームです。健康長寿のための文化、慣習、食事、風土など我々には多くの資産があります。高齢社会は経済的な成長には期待できない一方で、高齢者が健やかに暮らせる素晴らしい社会というメリットがあります。労働人口が減少し、扶養対象が増加して経済を圧迫し医療費が増大していることは事実ですが、にも拘わらず社会を維持できるという姿勢をアピールすべきだと考えています。

日本の消費社会を学びたいという国が非常に多く存在するのは明らかです。そうした国々に我が国の長所を理解してもらいたい。これを支えているヘルスケア産業や、長寿社会を下

支えしている例えば上下水道のようなインフラなどを、今こそ世界にアピールすべきだと考えます。「2025大阪・関西万博」は、日本のヘルスケア産業を世界に発信するベストな

舞台ではないでしょうか。

そこでJAHIの役割と意義が生きてきます。万博を通じて日本ヘルスケア協会の普及活動と、日本ヘルスケア学会によるエビデンスの確立が一体となり、ヘルスケア産業の育成を支援し、国内外に啓発したいと考えています。

 

万博を行動変容のきっかけの場に

 

――超高齢社会を支える産業の核の一つがヘルスケアだという共通認識があると感じました。その産業をアジア、世界に発信する場として万博は有用ですし、そこに期待している声もあります。

 

岩田 万博そのものは国際イベントです。世界の、人類の、地球の課題をつまびらかにしていく場になります。また万博はソリューションや答えを我々が提示する場ではなく、“課

題をみんなで理解して、答えを考える“ためのきっかけを提供する場です。

そこで「問い」を持って帰ってもらうことが目的です。その問いに対する「答え」が日本にきっとあるのではないか、と思って頂くことが大切です。“世界の、人類の、地球の課題を解決する重要なヒントが日本にある”という場として多くの人に気づいてもらいたいのです。

もしかしたらソリューションは日本ではなくて違う国にあるかもしれません。ただ今回「いのち」というテーマを掲げたことによって、日本の中にある色々なものが解決に役立つだろうと考えています。日本の産業や技術、考え方が世界に対して意味を持って受け入れられることを期待しています。

 

――万博からヘルスケア産業へ「問い」を投げかけているということですね。JAHIと万博はどのように関わり合うようになったのでしょうか。

 

今西 万博には、広い分野から非常に大きな期待が寄せられていることを知り、万博に関するワーキングに私共も参加するようになりました。ちょうどその頃に、上海万博で日本館を大成功に導いた岩田さんが統括調整官に就任されるとあって、最高のタイミングでした。そこで昨年9月の「第3回日本ヘルスケア学会年次大会」で基調講演を行っていただいたのです。それがきっかけとなり、関係を深めた成果が今に結びついているのです。

 

今後の経済を支える

“女性の働き甲斐”

――学会と言えば、JAHIの小原道子理事がドラッグストアに勤めながら学位を取得され、薬学博士となりました。

 

今西 学会のテーマの一つに「働きながら学位を取得する」を掲げています。先般、大手ドラッグストアに勤務する女性薬剤師が、公立の岐阜薬科大学の学位認定条件をクリアしまして、3月に無事に薬学博士号を修得しました。“働きながら博士号”の第一号、それも公立大学で修得したことに大きな意義がありますし、ヘルスケア学会を立ち上げた甲斐がありました。JAHIでもこのことを強くアピールし、多くの方に後に続いてほしいと思います。小原道子さんの快挙にJAHIは最大の祝辞を述べるとともに、応援を惜しみません。

 

――働く女性にとってシンボリックなことですし、万博を迎えるにあたって、今後の経済を支える女性の働き甲斐は重要だと思います。

 

岩田 とても素晴らしいことだと思います。1970年の大阪万博は、実は“外食産業元年”と言われているようです。ケンタッキーフライドチキンの日本初上陸に象徴されるような、新しい外食産業の姿が示されました。

2025年が“〇〇元年”と後年言われるようになるために、万博を活用してもらいたい。そのきっかけと行動変容を起こす施策が求められます。万博は、行動変容のきっかけの場でもあるので、働き方への考え方や行動が変わっていく可能性もあると考えます。小原さんのような「働きながら学位を習得して社会に還元していく」という新しい行動を生み出すきっかにもなりうると思いますね。

 

今西 本人の努力により、学位を修得したことも立派です。同時にその業績を支えた企業の目に見えないサポートも評価すべきだと思います。企業で働きながら成果を上げるには、企業の理解とバックアップが欠かせません。小原さんの偉大な功績を支えた企業の姿勢も素晴らしいものでした。

 

未来社会創造のチャレンジの場に

 

――万博の準備はどれくらい進んでいるのでしょうか。

 

岩田 万博は2018年11月に開催場所が決まった後に、具体的な開催内容を提出して、承認をもらって始めて開催できます。現在は承認を得るプロセスを踏んでいます。今回の万博のコンセプトは「未来社会の実験場」です。私たちはこれを「Peopleʼs Living Lab」と呼んでいるのですが、その名の通り挑戦の場と定義しています。その「Peopleʼs Living Lab促進会議」を博覧会協会で開催しています。これまでにもいろいろな企業や大学・研究機関から「2025年にこんなことができる」という提案を頂いています。

それらを含めたマスタープラン(基本計画)を博覧会協会が作っています。マスタープランは、博覧会協会がテーマの具体的な内容を世に示す初めての文書になります。そこで大枠が明らかになりますので是非とも楽しみに期待していただきたいと思います。

 

“食は予防に至る最大のプロセス”

 

――JAHIとしてどういった形で万博の取り組みとリンクしていけるとお考えでしょうか。

 

今西 日本の公的保険制度は素晴らしいと思います。ただし、43兆円を超えた財政的な不安もあり、ただ治療だけしていても日本の保険制度は維持できない。公的保険制度を守るために病気にならない努力や、軽い病気ならば自分で治すといった予防、つまりセルフケアの考え方が絶対に必要になってきます。男性の平均寿命が81歳、健康寿命が72歳と言われていますが、この9年のギャップを埋めることがセルフケアの果たすべき役割です。

そのためには今までの概念を変えることです。そこで重要になってくるのが「食」です。これまで食はエネルギー補給という見方をされていましたが、予防のキーワードにするべきです。ここにスポットを当てて「食は予防に至る最大のプロセス」「健康と予防の源は『食にあり』」と示すべきなのです。

ヘルスケア産業ならば、食だけではなくフィットネスやメンタルケアも内包され、相互にリンクして初めて健康な一生が遂げられるようになります。それを世界に示す初めての場所が万博であり、そのためにお互いが共に進んでいける道を探っていければいいと考えています。

 

岩田 万博は「問い」ですので、良い「問い」が持ち込まれる場であるように期待しています。例えばいろいろな国や企業や人がパビリオンを作り、そこで「問い」を発信していただけると思うのです。博覧会協会はそれらの「問い」を意味のあるものとしてコーディネイトしていきます。その中で、JAHIには「問い」を投げかける立場に立っていただきたいと考えます。

 

――万博を経て日本がどのように変化していくとお考えでしょうか。

 

岩田 万博を目的にしてはいけないでしょう。「万博を通して何を生み出したのか」が示される2025年になってほしいと思います。生み出すための一つの機会ですので、万博の会場だけを指すことでもありません。さらにその開催期間だけが万博でもないのです。半年間のイベントを活用して、そこに至るまでの期間、外の動きを巻き込んで大きな流れを生み出して次につなげていければと思っています。今皆さんがお持ちの考えやアイデア、「問い」が形となり続いていくのが万博なのです。

 

――JAHIにとっても万博との関わりはエポックです。今の答えを受けてどのようなゴールを描いていますか。

 

今西 これまで平均寿命が一般的な言葉でしたが、数年前から健康寿命の定義が始まりました。健康寿命を全うするためにどうするか、この大きな転換期にエビデンスの確立ができればいいと思っています。それを開示して意識が変わっていくでしょう。健康寿命を支える施策を万博でどんどん展開し、社会貢献に役立ててほしいと思います。必要なデータ、エビデンスを揃えて、運動・睡眠・食事の大切さを広める大きなチャンスになっていただきたいと期待しています。

発信しつづけることで日本にとっても、今より住みよい高齢社会国家になれます。平均寿命と健康寿命のギャップを埋める。そのゴールは、健康なまま平均寿命を維持する「ピンピンコロリ」ということになります。

 

きっかけを投げかける

JAHIの提案に期待

 

――思いを受けましてお互いにエールをお願いします。

 

岩田 万博というイベントがあることによって、このように垣根を超えた対談も実現していると思います。大阪・夢洲の万博会場だけでなく、日本中の人が「万博を使って何ができるだろう」と自分事にして考えていただきたい。JAHIはその問いを生み、きっかけを投げかける立場に近い組織だと考えています。2025年を「自分たちが参加したらどうなるだろう」「万博以後で業界や産業がどのように変わっていくだろう」といった道を描く重要な年にしてほしいですね。素晴らしい活動を展開していただけるとありがたいと思いますし、期待をしています。

 

今西 当会は今、公益財団法人化の申請を行っています。日本の健康寿命延伸を啓発する場として、万博を活用させていただくことが当会の発展につながります。今回このような対談を行えたことを誇りに思います。是非よろしくお願いいたします。

 

――ありがとうございました。

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