健康食品情報や機能性食品ビジネスの最新トレンドを配信

ARCHIVE
記事

【スペシャル対談】フランスベッドホールディングス・池田茂会長兼社長×日本ヘルスケア協会・今西信幸会長

シルバー産業参入の原点は「お客さまに喜んでもらいたい」

今回の日本ヘルスケア協会・今西信幸会長の対談企画は、フランスベッドホールディングス・池田茂会長兼社長にご登場いただいた。フランスベッドは寝具メーカーとして世界的に有名な企業であるが、業績を見ると、介護ベッドや車椅子のレンタルやアクティブシニア向けブランド「リハテック」などをメインにしたメディカルサービス事業が売り上げの6割を占めている。早期からシルバー産業に参入した同社だが、池田会長兼社長の「お客さまに喜んでもらいたい」という思いが原点となっている。現在日本は超高齢社会に突入しており、在宅医療・介護などで多くの課題を持っており、それに対して同社および日本ヘルスケア協会がどのような立ち位置でアプローチしていくのか、この対談を通じて明らかになった。

 

ヘルスケア推進が日本で進まない理由

今西会長 ヘルスケアは先進国でGDPの中で4割を占めていますが、日本は先進国で唯一取り残されている状況にあります。その理由は、先進国ではヘルスケアを管轄するのはアメリカでいうFDAのような食品から医薬品まで一気通貫で掌握する組織である一方、日本はFDAを4つの省に分けているからです。医療と医薬品は厚生労働省、食品は農林水産省、ペットケアは環境省、食品やサプリメントは消費者庁となっています。

このままでは先進7カ国に追いつかないため、経済産業省が旗を振って10年ほど前に「ヘルスケア産業課」が立ち上がりました。5省の連携でようやくヘルスケア推進が可能になりました。厚労省は予防分野を「セルフメディケーション」と表します。それは厚労省の範囲内で対応できる分野であり、あくまでも世界的にはヘルスケアの一部です。

極端な例えですが、これまで製薬企業、食品企業という分け方ではなく、健康に携わるという切り口でいえばヘルスケア企業ということになります。フィットネス、睡眠、ペットケアなど、どれもこれもヘルスケアなのです。

そういった意味で、私はフランスベッドさんをヘルスケア企業だと認識しています。70年以上の歴史を持つ企業として、これまで睡眠や介護など様々なニーズに対応してきましたね。

フランスベッドホールディングス 池田茂会長兼社長

池田会長兼社長 フランスベッドの歴史は1949年に創業した双葉製作所がスタートとなります。56年に日本初の分割式ベッド「フランスベッド」を発売し、お客さまからとても高い評価をいただき、その際に社名をフランスベッドに変えました。その後、在宅における福祉用具レンタルサービスを普及すべくフランスベッドメディカルサービスを設立しました。

私の父(池田実氏)がフランスベッドの創業者ですが、フランスベッドメディカルサービスを設立したのは私です。当時、父からはシルバー産業の参入には反対されましたが、社会的意義は非常に大きいと思っていましたので、反対を押し切って事業をスタートさせました。設立から10年は赤字でしたが、11年目にようやく黒字化し、事業を軌道に乗せることができました。2009年にフランスベッドとフランスベッドメディカルサービスが統合し、現在のフランスベッドが誕生しました。その持株会社が2004年に設立されたフランスベッドホールディングスとなります。

 

いち早く“シルバー産業”に参入したフランスベッド

今西会長 そう考えると、フランスベッドさんは高齢者に対する事業への参入がかなり早かったと感じます。

池田会長兼社長 私も当時“シルバー産業”という言葉を知りませんでしたが、83年のある日、日経新聞に「フランスベッド、シルバー産業に参入」という見出しの記事が掲載され、「今やっている事業はシルバー産業というのか!」と初めて知ったくらいです(笑い)。

現在は日本でも在宅医療・介護が徐々に普及してきていますが、当時は高齢になると持病が悪化し、そのまま病院や施設に入るという時代でした。日本では在宅医療と在宅介護は分けて考えられていますが、アメリカなどの先進諸国では、自宅での療養、つまり「ホームケア」という括りに入っています。当時は訪問看護・介護もなかった時代ですので、フランスベッドメディカルサービスの取り組みはなかなか理解されませんでした。ですが社員とともに「これから必ず『ホームケア』が世の中に役立っていく」と信じ、営業活動だけではなく、世の中の皆さま対して啓発活動も実施してきました。その結果が業績につながったのだと思います。

今西会長 現在では介護ベッドのレンタルは当たり前のようになっていますが、そのパイオニアとしての苦しみはあったと思います。

池田会長兼社長 83年、日本で初めて介護用ベッドや車椅子の在宅向けレンタル事業を開始させましたが、そのきっかけは、介護用ベッドをご購入いただいたお客さまからの「3ヶ月前に購入したばかりだけど、おばあちゃんが亡くなってしまった。下取りしてほしい」という一本の電話です。ビジネスというよりも「お客さまに喜んでいただきたい」という考え方でスタートさせました。

当初はどこに営業をすればいいのかわからずコツコツと取り組むしかありませんでした。東京都府中市では、厚生省(当時)が決めた日常生活給付事業で高齢者に介護ベッドや車いすを提供していました。しかし先にも述べたように、レンタルのニーズが高まっており、府中市が当社のレンタル事業に理解を示し、導入することになりました。それに注目していた山形県鶴岡市、宮城県仙台市が続き、その輪が全国各地に広がっていったのです。

日本では2000年に介護保険がスタートし、それが追い風となり当社の事業を拡大していくことになりますが、この取り組みが世の中に認知されていくことによって、この分野に参入する企業が数多く出てきました。

 

ヘルスケア市場活性化の鍵を握る「アクティブシニア」

アクティブシニアのQOL高める「リハテック」

日本ヘルスケア協会 今西信幸会長

今西会長 現在「アクティブシニア」という言葉が生まれ、元気な高齢者に対してのサービスが増加している傾向にありますが、フランスベッドさんではどのような取り組みがありますか。

池田会長兼社長 メインターゲットは介護保険制度の対象者です。しかし保険制度の内容は私たちが決めるのではなく、行政が決めることですから、それに固執していてはいけないと考えています。

そこで当社は介護保険外の取り組みとしてブランド「リハテック」を作りました。寝たきりの方は高齢者の中でも少なく、元気なアクティブシニアが大半です。介護保険と関係なく、このアクティブシニア層に対していかにアプローチしていくのか、それが「リハテック」と位置付けています。

一見すると分かりにくいのですが、アクティブシニアといっても完全に体が万全な方は少なく、体のどこかしらが不調であるケースが多いです。私も高齢者になっていますが、年齢を重ねるとなにがしかの薬を飲んでいたり、体の一部が動きにくかったり様々な悩みを持っています。

「リハテック」はシルバーカーや杖、ハンドル型電動車イス、電動アシスト三輪自転車などアクティブシニアが生き生きと暮らしていけるような商品を取り扱っています。

各地で「リハテックショップ」を展開しており、現在は新型コロナウィルスの影響でなかなか思い通りの営業活動ができていませんが、高齢化率が高まっている今後のことを考えると必ずお客さまに喜ばれるカテゴリーだと考えています。そういった社会的意義も含めて当社は高齢社会に対応し、フォローできる企業になっていきたいと思います。

 

老老介護をいかに支えるか?フランスベッドの課題

今西会長 日本人の平均寿命は世界で1番高く、高齢者率は28%を超えています。2位のイタリアは23%、3位のポルトガルは22%であり、5%以上もこれらの国よりも日本の高齢化率は高いのです。日本は世界最大の高齢者国家であり、財政面では厳しいという点はありますが、ポジティブに捉えると長寿政策に成功し、高齢国家として成功している国だといえます。

これまで国は平均寿命を発表していましたが、最近は健康寿命を発表するようになりました。男性の平均寿命は81歳ですが、それに対して健康寿命は72歳となっています。私は今73歳ですので、そういう意味では危ないかもしれません(笑)。女性に至っては、平均寿命が87歳で健康寿命が75歳と、この差が12年にもなっています。

こうした社会の中、介護ベッドは今後増え続けていくという見方もできます。これまでは「夜になったら寝る」ということで睡眠という行為は当たり前のことでしたが、医学・医療が進むにつれて睡眠の重要性が高いことが明らかになってきました。

健康で長生きしていくには、「心と体と頭に良いことをしよう」というアプローチが重要になってきます。体と頭に対しては「これだけ眠れば良い」と言う指標が出ていますが、心に対してはそれがまだありません。フランスベッドさんには心に対してのエビデンスを確立し、啓発をしていただきたいと思います。これはビジネスという意味合いだけではなく、社会的意義も大きいと思います。

池田会長兼社長 当社は認知症に対するアプローチにも注力しています。これからは「高齢者の5人に1人が認知症になる」という見方もあります。どんどん増えていくわけですが当社は製薬企業ではありませんので、薬学的な面でお役にたつことが難しいですけれども、介護関連商材を用いることで介護者の日々の生活を快適に、かつ、介護がしやすい環境を整えることは可能だと考えています。

また、介護で問題だと感じるのが、少子高齢化が進展した結果、介護する人が少なくなっていくということです。30年ほど前にドイツの老人ホームを視察させてもらったことがあります。キリスト系の宗教団体が運営している施設なのですが、介護をするシスターたちが高齢化しており、今の日本で言う老老介護のような現場でした。

それを見た私はこれから日本では高齢者が高齢者の介護をする世の中になるだろう思いました。ですが、高齢者には体が老化しているだけで、精神は非常に元気な方々が多くいます。当社は様々な機能を備えた介護ベッドなどの、体力を使わなくても介護ができるような商品などを開発し、レンタルを中心に、元気な高齢者の方々でも無理なく介護できるような商品を提供していきたいと思います。

一覧に戻る